4月24日の昼前(米東海岸時間)に、突然、FOXニュースの代表的司会者(彼の番組は全米視聴率圧倒的No.1)で、トランプ前大統領とも親しいタッカー・カールソン氏が降板することが発表され、他の話題が吹き飛ぶほどの衝撃が走った。その直後に、CNNの看板司会者、ドン・レモン氏(アンチトランプで有名)が突然解雇されたことも話題となった。

それらのニュースでメディア界も政界も騒然とする中、翌日25日の早朝、バイデン米大統領が2024年の大統領選に出馬するという速報が一斉に流れた。

バイデン氏がウクライナを電撃訪問した時の速報と同様に、今回も米ワシントン・ポスト紙が一番初めに速報を流し、米政府とのパイプの太さを感じさせた。

バイデン氏は、編集されたイメージ映像を中心としたPRビデオを通じて、正式に立候補を表明し、「この国が致命的なパンデミック、後退する経済、揺らぐ民主主義に包囲されていた時に始めた仕事を終わらせたい」と述べている(本人が直接語りかける映像部分は極端に少ない)。

ただ同氏は、民主党内でも、極端に人気がない。4月下旬発表のラスムセンの調査によると、次の大統領選で「第3の政党の候補者に投票する可能性が高い、あるいは可能性がある」と答えた民主党員は、50%に上った(下画像参照)。この割合は共和党員より10%高い。

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画像はYouTubeの「Rasmussen Polls: Despite Biden Incumbency, Dems Most Willing to Vote THIRD PARTY」よりキャプチャー

また、リベラル系主要メディア「CBS」の世論調査でさえ、72%の人が「ジョー・バイデンのアメリカは制御不能だと思う」と答えている(4月26日付 CBS記事)。さらに、CNNによると、バイデン氏は、過去70年の同時期の大統領支持率の最低記録(1979年4月のカーター元大統領の40%)に次ぐ、2番目の低支持率(41%)を記録(4月25日付 CNN記事他)。ギャラップの調査も、「出馬宣言をしたバイデン氏は、大統領就任以来、最低の支持率(37%)を記録した」ことを見出しで報じている(4月27日付ギャラップ記事)。

しかし、バイデン氏は人気の低さにもかかわらず、なぜか「票数を集める」ことはできるため、バイデン再出馬は、「トランプ氏の大統領再選を阻止するためには有効」と広く考えられている。「トランプ再選の阻止が最優先」というのが、多くの民主党員や党派を超えたエスタブリッシュメントの本音であるため、結局、24年大統領選は、20年と同様、「トランプ対アンチトランプ」の構図となり、トランプ再選を阻止できる最有力民主党候補として、再びバイデン氏が任命されるだろうと予測されている。

バイデン氏は、その期待に応えるかのように、トランプ氏及び支持者を、「MAGA(Make America Great Again/「アメリカを再び偉大に」) 過激派」と呼び、危険な存在として徹底的に非難。過去4年間の自身の具体的実績には触れず、「トランプ再選を阻止できる大統領候補」として訴えている。

大手メディアもそれを指摘し、「バイデン氏は、再選に向けた戦いで、自らの功績に頼りたいとは思っていない。彼は、前大統領が大統領執務室に復帰すればどんな事態が起きるか分からないという恐怖感を再びあおる形で、大統領選挙を戦いたいと考えている」と評している(4月25日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。

一方、3月30日に起訴されてから共和党内支持率が急上昇しているトランプ氏は、次々に有力な議員などから大統領選に向けた公式推薦を獲得しており、毎日のように、トランプ氏の発言が話題となり、政界への影響力はさらに増している。

上院共和党の選挙運動部門のリーダーであるスティーブ・デインズ議員もトランプ氏を支持することを決め、米共和党上院トップのミッチ・マコネル院内総務がそれを承認したと、4月27日付ニューヨーク・タイムズ電子版が報じている。

マコネル氏は最近あからさまなトランプ批判をしていた人物だが、共和党の主要な大統領候補であるトランプ氏と力を合わせることを静かに決定したようだ。

これによって、「共和党はトランプ支援で固まった」と指摘する人も多い。

アメリカ有権者の大半は、「選挙不正が結果に影響を与えた」と考えている

そして次の大統領選は、「選挙制度をめぐる不正との戦い」にもなるだろう。

4月18日、FOXニュースは、投票機メーカーのドミニオン・ヴォーティング・システムズから、「大統領選の不正を手助けしたとFOXに報じられた」として名誉毀損で訴えられていた裁判で、7億8750万ドル(約1060億円)を支払うことで和解したと発表し、一見、選挙不正問題が解決したかのように報道されている。

しかし実際には、最近の世論調査でも、2022年の中間選挙に関して、アメリカ人の有権者の60%は、「選挙不正がいくつかの選挙結果に影響を与えたと考える」と答えており(4月20日付ラスムセン調査)、現在の投票制度を信用しているアメリカ人は少数派である。

アメリカでは、コロナ対策が実施された結果、ほとんどの州の選挙で大幅に「郵便投票」が認められるようになり、多くの民主党州では、5年~30年以上更新していないのではないかと思われる選挙人名簿を基にして、申し込んでいなくても、投票用紙が一斉に送られてくる。

例えば、毎回、30年前の居住者と、10年以上前に住んでいた息子の分と、自分自身の分の計3通の投票用紙が送られてくるという有権者の例もある(民主党優勢の某州)。

民主党州の郵便投票には、原則、本人確認のための身分証明書は必要なく、投票用紙のマークシートに印をつけて、投票用紙と封筒の2カ所にサインをして送れば、確実に一票になる。

したがって、共和党内でも、「投票所に足を運んだ投票だけでなく、民主党のように、可能な限り郵便投票を活用していかなければ、民主党に勝てない」という意見も最近かなり出てきている。

ただトランプ氏は一貫して郵便投票を批判し続け、「当日、投票所に足を運んで投票すべきだ」などと訴えてきた。そのため、多くのトランプ支持者は送られてきた郵送投票用紙を破棄して、投票日当日に投票所に足を運んでいるのだが、昨年11月に行われたアリゾナ州知事選挙では、投票日当日の朝に突然、共和党が多い地区で「ドミニオン・ヴォーティング・システムズ」の投票集計機が一斉に故障して、多くの共和党員が投票できない事態に陥った。

トランプ支持で有名な、アリゾナ州知事選に立候補したカリ・レイク氏は、直前まで毎回支持率で民主党候補を上回っていたが、投票集計機が故障したこともあって、知事選で敗北した。

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トランプ支持を掲げて、同氏とともにアリゾナ州知事選挙を戦ったカリ・レイク氏(画像:brian james cramer / Shutterstock.com)

レイク氏は訴訟も起こしたが、裁判所は「ドミニオンの機械の故障は故意ではない」と判断し、彼女の主張は認められなかった。レイク氏を初め、多くの保守系有権者の怒りは収まっておらず、レイク氏は今も、保守系の集会や番組などで引っ張りだことなっている。

大統領選での民主党指名争いに出馬宣言したケネディ氏

また、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥で、弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏が2024年大統領選の民主党候補指名争いへの出馬を発表したことについて、トランプ支持者系の間で妙な盛り上がりを見せている。

同氏の主張の中心は「自由主義」だが、外交的には徹底した「非介入主義者」だ。また左翼的な環境論者ではあるものの、コロナワクチンの安全性に疑問を呈している。

さらに、同氏は以前、「タッカー・カールソン・トゥナイト」というFOXニュースの番組(当時)で、ウクライナに対して行っているアメリカの援助(総額1130億ドル)に関して、「我々は余裕のない戦争にお金を払っている」と述べた。

またケネディ氏は、ニクソン大統領時代の元米国務長官ヘンリー・キッシンジャー氏からレーガン時代の駐ソ連大使ジャック・マトロック氏まで、多くの外交政策の専門家が「ウクライナ戦争は我が国にとって大きな問題であると言っている」と指摘。なぜなら「地政学的に見れば、その行為はロシアを中国に近づけるが、それは我々にとって最悪だからだ」「(ウクライナ戦争について)我々が聞かされている情報は真実ではない」とも語っている。

他にも政府(バイデン政権)への不信感が強いなど、トランプ氏の主張と似ている部分も多いため、トランプ支持者の間でも応援する人が出ており、保守系メディアやグループでも頻繁に話題にされている。

同氏は民主党内でも人気があるらしく、バイデン氏の支持者がケネディ氏の支持にかなり流れると言われている。このほど行われたUSAトゥデイ/サフォーク大学の世論調査では、20年にバイデン氏を支持した人のうち14%が、24年大統領選ではケネディ氏を支持すると回答した。

「ケネディ氏は苦戦必至」とも言われているが、党派を問わず、有権者の多くは、隠蔽体質のバイデン政権や利権で癒着したエスタブリッシュメント系に対して、同じような不満を持っていることが分かる。

バイデン氏への批判も強まっている

そして、最近の顕著な傾向として、中立、あるいはリベラル系メディアで、トランプ氏を肯定する報道がやや増えており、バイデン氏批判が以前よりも強くなっていることがある。

民主党陣営及びエスタブリッシュメント系は、バイデン氏はトランプ再選を阻止できる可能性が高いと見ている一方で、「バイデン氏の2期目は阻止すべきだ」と考えている人も多いのではないかと見ている選挙アナリストもいる。

その大きな理由の1つとして、「カマラ・ハリス大統領誕生」の実現を懸念していることがあるようだ。民主党内でも、ハリス氏に大統領の器があると考えている人は少なく、2期目もバイデン氏が大統領になれば、ほぼ確実に、途中からカマラ・ハリス大統領になってしまうと考えられているからだ。

これから24年に向けて、かなりダイナミックな動きが起きる可能性があるだろう。

(米ワシントン在住 N・S)

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