2023年3月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 32

ウクライナの全土奪還は現実離れ

社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について専門家のリレーインタビューをお届けする。

フリージャーナリスト

竹内 修

竹内修
(たけうち・おさむ) 1970年、長野県生まれ。立命館大学法学部卒。軍事月刊誌「PANZER」「エアワールド」などの編集に従事し、現在はフリージャーナリストとして、軍事雑誌等に寄稿している。

ロシア―ウクライナ戦争をめぐり、西側諸国はウクライナに対する武器支援のレベルを上げています。

イギリスは主力戦車(チャレンジャー2)、フランスは軽戦車(AMX―10RC)、ドイツは歩兵戦闘車(マルダー)を供与し、支援を継続する意志を鮮明にしました。

現状の支援では戦局を覆せない

日本のマスコミは高く評価しているようですが、支援の実態としては政治的メッセージの意味合いが強く、ウクライナが目指す全土奪還を実現できるレベルではないことは明らかです(1月15日時点)。

軽戦車や歩兵戦闘車はロシアの戦車に対抗できない上、イギリスの戦車もたった14両の供与に過ぎません(イギリスの戦車の供与は、戦車を多く持つドイツに圧力を加え、在庫を吐き出させるためと見られます)。ロシアの物量には太刀打ちできず、膠着している現状の戦局を一変させるほどではありません。