2022年12月号記事
ニッポンの新常識
軍事学入門 29
ウクライナ進撃とロシア敗北論のウソ
社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」をお届けする。
西側諸国のマスコミは、「ウクライナ軍が快進撃し、ロシア軍は今にも敗北する」というようなイメージを広げている。
だが本当にそうなのか。
"敗北の象徴"となったのが、ロシア軍が9月上旬にウクライナ北東部ハリコフ州から撤退したことである。ウ軍がこの戦いで初めて勝利を収めたことで、マスコミなどは「これまでの支援には成果があった」と誇示している。
ロシアは合理的に判断している
しかし軍事的に見れば、全く違う光景が見えて来る。「露軍は戦線を縮小して戦うという合理的な決断をした側面もある」(元自衛隊幹部)のであり、ロシアが軍事的に敗北したとは言えないだろう。欧米当局者も、「厳密な軍事用語では、(露軍撤退は)完全な崩壊というより、参謀本部から命令・承認された撤退であったと思われる」と指摘し、ウクライナ勝利の転換点であると言うには時期尚早と戒める(*)。