2022年11月号記事

Movie

アイ・アム まきもと

【レビュー】

空気が読めない、人の話を聞かない……地方の小さな市役所の市民福祉局に勤める"変わり者"の牧本壮は、身寄りがなく独りで亡くなった人を無縁墓地に埋葬する「おみおくり係」で働いている。

葬儀を自費で、故人の宗教に則って執り行い、遺族が引き取りに来る可能性を考えて遺骨はすぐ納骨しない。たとえ周りの人の迷惑になろうとも、亡くなった人のことを思い、せっせと仕事をする牧本だが、合理化を推し進める新任の市民福祉局局長から、「おみおくり係」の廃止を告げられる。

最後の仕事となった、孤独死した独居老人・蕪木孝一郎の葬儀に一人でも多くの参列者を呼ぼうと、蕪木の部屋で見つけた写真などを手掛かりに、かつての同僚や娘を探し出す。彼らの声を聞くうちに、蕪木の人生やその心根、人間性を知ることになり、また遺族との交流を通じて、牧本の日々にも少しずつ変化が生まれるが……。

昨今、社会問題化する孤独死をテーマに、人と人とのつながりや人生の儚さ、喜びを問う本作。会ったこともない故人一人ひとりに寄り添う牧本の不器用な純粋さは、日本人が忘れかけている何かを伝えてくれる。果たして、最後の「おみおくり」はどうなるか。思いもよらない結末には、誰もが驚くだろう。