《本記事のポイント》

  • 北朝鮮ICBM連続発射は露北の「共同行動」か
  • 露北中が結束すれば台湾は取られたも同然に
  • 「4正面作戦」で最大の試練を迎えるアメリカ

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

前回この欄で「1から分かるウクライナ情勢」について書きましたが、ウクライナ情勢は、今後の世界の二極化に向けて取り返しのつかない状況をもたらす可能性があるため、現状を踏まえてさらに問題点についてお伝えします。

ロシアとウクライナの停戦交渉は簡単にはまとまらない

まず停戦交渉の見通しについてです。4度目の停戦交渉が3月29日からトルコのイスタンブールで開催されました。

ウクライナ側は、ロシアが求めるNATOと距離を置く「中立化」については妥協が可能との立場ですが、ドンバス地方はもとよりクリミアを含めて、国民や領土、主権に関しては譲れないという立場です。

またロシア側は、ウクライナの体制転換は求めないとするものの、ウクライナの「中立化」と、ドンバス地方などの独立要求に対して「妥協するつもりは一切ない」と語っています。

つまりプーチン氏は、首都キエフの掌握と親ロ政権の樹立までは目標としない一方、ドンバス地方から南部の黒海沿岸にかけての領土の要求や独立承認は譲らない見通しです。

このことは大川隆法・幸福の科学総裁が2月24日に収録したプーチン大統領の守護霊霊言においても、こう語られています。

まあ、ウクライナの東部と南部は下さい。そうしたら、だいたい、今回はそれで収められます」(『ウクライナ侵攻とプーチン大統領の本心』)

これとほぼ同じ主張が実際の停戦交渉に持ち込まれているとみてよいのではないでしょうか。そうなると停戦交渉では互いに譲り合えない主張がぶつかっている可能性が高く、簡単には合意に至らないと考えます。

紛争長期化で高まる中東・東アジア紛争リスク

ウクライナが予想外に善戦し紛争が長期化している背景には、アメリカを始めとしたNATO諸国の兵器や弾薬など、絶大な支援があることは周知の事実です。

3月15日に成立したアメリカの2022年度予算では、約65億ドルものウクライナ支援が決定され、アメリカ国内でウクライナ軍用の携帯式の対戦車ミサイルや対空ミサイルがフル稼働で製造されているようです。

しかしゼレンスキー大統領は3月26日深夜のビデオ演説で、NATOが十分な兵器の提供を怠っていると、いら立ちを露わにしました。この様子は、ロシア軍が挫折しつつあるという報道とは裏腹に、現実の戦況は、ウクライナこそ追い詰められつつあるのではないかと感じさせるものでした。

北朝鮮ICBM連続発射は露北の「共同行動」か

こうした事情からか、ゼレンスキー大統領はロシアと正面から戦える強力な兵器の提供を求めていますが、欧米はそれに応じるべきではありません。ウクライナを支援すればするほど戦争は長引き、泥沼化すると思われるからです。

ウクライナ紛争の長期化は、他の地域に新たな問題を引き起こしかねません。

たとえば北朝鮮です。同国はロシアが侵攻した直後の2月27日に、これまで封印していたICBM(大陸間弾道弾ミサイル)の発射実験を行いました。その後も続けて3月5日、16日、そして24日と、立て続けに実験をしています。

北朝鮮の動向を研究する米シンクタンク38Northによると、今年になって初めて発射されたICBM火星(ファソン)17号は、これまでの火星15号と比べてかなり大きく、大きな弾頭を搭載できるなど、一線を画すミサイルだと分析しています。

同分析では、火星17号の大きな搭載能力を利用して、複数の目標を狙うことができる多弾頭化(MIRV)を試みたり、非常に大きな単弾頭を搭載したりすることもあり得るとしています。加えてアメリカのミサイル防衛を突破するための「おとり弾頭(デコイ)」も同時に搭載することができるかもしれないと述べています。

つまり火星17号はそれまでのICBMとは比較にならない、大きな脅威になりうるICBMだと推定されるのです。

ただ3月16日の発射では、火星17号は発射直後に空中爆発して失敗。続く24日の発射では、北朝鮮は火星17号の発射に成功したと主張しましたが、実際には火星15号だったのではないかという分析もあり、正確なところは明らかになっていません。

新型ICBMが空中爆発するような重大事故の場合、その原因を徹底解明し、不具合を修正した後に再実験するのが通常ですから、3月16日からわずか8日後に同じICBMを打ち上げるのはあまりに不自然です。

したがって、強力な新型ICBMの開発に成功したことを早期にアピールする何らかの必要性があったと考えざるを得ません。

つまり北朝鮮の急激なICBM発射実験の背景には、純粋な技術開発上の要請ではない、政治的な動機があると考えらえるのです。

この点について疑われるのが、北朝鮮とロシアの共闘です。

それを裏付けるのが、大川総裁が3月26日に収録した金正恩総書記の守護霊の霊言です(『金正恩ミサイル連射の真実』)。

金氏はICBMの発射実験について、「もう、共同行動だよ。はっきり言やあ」と驚くべき実態を明かしています。

さらに有事の場合にも、「次はロシアのほうが北方領土を要塞化して、軍事基地として強化していきますから、これから。だから、もう日本は、反ロシアの態勢を取ったんで、これはロシアから見りゃあ、日本に制裁をかけなきゃいけないんで、『共同行動』というのがありえますわね。……ロシアと北朝鮮が同時にミサイル撃ったとしたら、どうします? それだったら、撃ち返すのも大変だとは思いますよ」と述べました。

また金正恩守護霊は、「もしウクライナと韓国と、二カ所で戦争が始まったら、バイデンの頭はもう"裂けちゃう"でしょうね」とその意図を語っています。

つまりウクライナ紛争の勃発は、北朝鮮の軍事活動を活発化させる大きな要因になっていると推定されるのです。

ロシアにとって北朝鮮の利用価値は高いです。北朝鮮は、アメリカ・NATOによる対ロ強硬路線を軟化させ、ウクライナ支援を止めさせるための手段に適しています。アメリカ・NATOによる支援が止まれば、ウクライナの戦闘継続が不可能になるからです。

ウクライナ紛争が長期化するほど、ロシアは紛争の出口の活路を見いだす状況づくり、つまりアメリカが妥協せざるをえなくなるような状況づくりに力を注ぐ誘惑に駆られるのです。その有力な手段の一つが、東アジアや中東の「不安定化」ではないとは言い切れません。

大川総裁は、前掲書『金正恩ミサイル連射の真実』の「まえがき」において、金正恩の主張を集約する文脈の中で、「ロシア、中国、北朝鮮、イラン、シリア、南米と反米の連携が進んでいる」と述べておられます。

北朝鮮が新型ICBMを異例のスピードで連射するのも、西側をウクライナに集中できないようにする、反米諸国家の共闘と考えるべきではないでしょうか。

現実の世界秩序も刻々と再編されつつあります。中国の王毅外相とロシアのラブロフ外相は3月30日、中国で会談を行い、ロシア外務省は「両国の外交政策の協力拡大で合意した」と発表しました。

露北中が結束すれば台湾は取られたも同然に

危機感を募らせるべきは、中国と北朝鮮、ロシアなどとの共闘による台湾危機というシナリオです。

ウクライナ紛争において中国がロシアに恩を売った場合、台湾有事でロシアから何らかの「返礼」があり得ます。

考えられる事態は2つあります。(1)欧州方面での軍事的圧力を高めて、アメリカが中国の軍事行動に集中できない環境を作る。(2)日本海やオホーツク海、北方領土を含む千島列島での軍事演習や圧力を強化し、日米の戦力を分散させる。

北朝鮮と中国の連携にも2つの事態がありうるでしょう。(1)北がミサイル発射を頻繁に行う。(2)38度線へ兵力を展開させて韓国と在韓米軍に圧力をかける。

こうした動きが単なる威嚇にとどまるものなのか、それとも韓国侵攻が同時発生するのかは、判別が極めて困難です。

したがって米軍は最悪の事態に備えて、ロシア・北朝鮮・中国との「3正面」作戦を考えざるを得なくなり、台湾防衛まで手が回らなくなるでしょう。

併せて中国は、日本の台湾支援を断念させるために、尖閣諸島周辺でも圧力を強めていく。日本の領土防衛を疎かにできない自衛隊は、台湾防衛に戦力を割く余裕がなくなるためです。

「4正面作戦」で最大の試練を迎えるアメリカ

また中国は、イランに経済支援、核開発支援を行うことでイスラエルを圧迫して、アメリカを慌てさせることもできるでしょう。中東まで加えるなら、アメリカは「4正面」戦争のリスクを抱え込むことになります。

ウクライナのゼレンスキー大統領とバイデン米大統領のラインがウクライナ紛争を長期化させるならば、ロシアはアメリカに妥協させるために、中東や東アジアを不安定化させることを、反米諸国に要請することはあり得えます。

その要請に応じた国に、ロシアも協力することになるでしょう。

これは世界各地での「戦争の時代の幕開け」を意味するかもしれません。

欧米がロシアに強硬姿勢を取り続けるほどの愚策はありません。ロシアが納得できるかたちでウクライナ紛争の一刻も早い幕引きを図らねばなりません。

HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回のウクライナ情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。

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