《本記事のポイント》
- 発言取消は民主主義社会に対する重大な挑戦!
- 「合法的買収」問題は全国の議会で議論すべき重要問題!
- 「合法的買収」問題を国民的議論にすべき
栃木県下野市議会で20日に審議されていた給付金の予算案について、石川信夫市議(幸福実現党)が「合法的買収」と指摘した。これに対し小谷野晴夫議長(公明党)が「不穏当」とみなし、取り消しを命じた。21日付下野新聞が報じた。
議会では本年度の一般会計補正予算案を審議する臨時会が開かれていた。市執行部は新型コロナウィルス対策として、住民税非課税世帯や18歳以下の子供に臨時特別給付金10万円を給付する補正予算案を提出していた。これに関する質疑・討議の中で、石川市議は市長に「選挙で票が欲しいための合法的買収。市長はどう考えるか」と追及した。
これを小谷野議長が問題視。議会を暫時休憩とし、議会運営委員会で対応を協議しつつ、石川市議に発言の「不穏当部分」について削除を求めたが、石川氏は応じなかった。小谷野議長は議会再開後、「発言は不穏当と認められるので地方自治法により取り消しを命じた」と通告したという。
発言取消は民主主義社会に対する重大な挑戦!
小谷野議長が引き合いに出したのは、地方自治法129条1項。ここでは「議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、(中略)発言を取り消させ(中略)ることができる」と定められている。もちろん議会内の発言が「議場の秩序を乱す」ものかどうかは一律に決まるものでなく、今回の判断は小谷野議長自身の解釈・判断によるものとなる。
だが今回の「合法的買収」との指摘のどこが「議場の秩序を乱す」ものなのか。今回の発言は「正当な言論の行使」であって、何らかの暴力行為等も伴わず、「議場の秩序を乱す」ものでは全くない。議長による発言取消は明らかな地方自治法の濫用であり、このような濫用が許されるとすれば、選挙で選ばれた議員による自由な討議が圧殺され、民主主義社会に対する重大な挑戦となる。
「合法的買収」問題は全国の議会で議論すべき重要問題!
そもそも日本国政府の債務残高は1000兆円、地方は200兆円を超える。その総計は国内総生産(GDP)比200%を優に超え、先進国としては未踏の領域に入りつつある。破綻まっしぐらか、あるいは将来の大増税による国民経済破壊を招く、大変危険な状況であることは明白だ。
それにもかかわらず中央・地方政府は給付金などの大盤振る舞いを続け、特にコロナ発生以降は、過剰な感染対策に対する"補償"を名目として、バラマキを加速させている。
その背景にあるのが、選挙において多くの票を得て、既存の政治勢力を維持する動機であることは、周知の事実。根深い日本の民主主義の構造的問題である。
「合法的買収」はこの、「法律に基づいて通った予算ではあるが、その本質がしばしば政治家が罰せられる有権者への買収と同じであり、これが財政を脅かしている」という構図を、何ら誇張もなくそのまま表現したものだ。
この言葉がなぜ「不穏当」になるのか。なぜ予算の妥当性を審議する場で問題提起した議員が、「議場の秩序を乱す議員」と見なされ、自由な討議の場であるにもかかわらず、その発言が取り消し・圧殺されなければいけないのか。これでは香港議会における言論弾圧と同じではないか。議長の判断は過剰であり、これが発言の取消権の濫用でないことを、説明する必要がある。
「合法的買収」問題を国民的議論にすべき
なお石川市議が批判した「18歳以下への10万円の給付」と言えば、昨年秋の衆院選挙で議長の所属する公明党が掲げ、その後、強固に推進した政策と同じである。本誌1月号記事では「公明党の給付金は選挙活動に対する"御利益"」と指摘したが、同党こそ、「合法的買収」との指摘を真摯に考える必要がある。
いずれにせよ、「合法的買収」問題は「不穏当」などでは決してなく、地方議会でも優先的に議論されるべき、いや、地方を超えて「国民的議論」とすべき問題である。
【関連書籍】
『減量の経済学』
幸福の科学出版 大川隆法著
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