《本記事のポイント》

  • ウイグル強制労働の関与でZARAの店舗拡大が阻止される。
  • 取引過程で20もの会社が仲介し、中国と取引する限り強制労働の不関与は証明できない。
  • 「対話と協力」が基本姿勢の日本政府は、制裁を課す法整備を行うなど「正義」を示せ。

フランス当局者はこのほど、アパレル大手ZARAの親会社であるインディテックスが、新疆ウイグル自治区の「奴隷労働製品」の使用に関与している疑いがあることを理由に、ボルドー市での店舗拡大計画を許可しないという方針を明らかにした。

ZARAはボルドー市で店舗の規模を2倍に拡大する予定だった。しかし、フランス司法省が今年7月に「人道に対する罪の秘匿の疑いがある」として捜査を開始していることから、審査を担当する地域委員会はZARAの計画を許可しなかった。フランス地方政府委員会のメンバーであるアラン・ガルニエ氏は、「当局がサプライチェーンに問題のある店舗の進出を阻止することで、強いシグナルを送ることができる」と述べた。

さらに、別の委員会メンバーは、「ZARAは強制労働の審査に関わっているため、店舗拡大プロジェクトは委員会が検討した持続可能な発展基準に違反している」と話した。

中国と取引している限り、強制労働への無関与は証明されない

一方でインディテックスは「当社では、厳格な管理を行っており、強制労働によって栽培された綿花は使用していない」と説明しており、地域委員会の判断に関しては「今回の決定は、いかなる司法判断にも基づかないものであり、その動機が明らかになったことに驚きを隠せない」とロイター通信の取材に答えている。

中国と取引している限り、強制労働に関与していないことを、そう簡単には証明できない。そもそも綿の原材料の生産過程は極めて複雑である上に、中国共産党の傘下組織で、ウイグル綿花の生産団体である「新彊生産建設兵団(XPCC)」は86万以上に上る子会社を経営。ZARAやユニクロなどの会社とやり取りする際には、20以上の会社を間に挟むとの指摘もあり、取引先が強制労働に関与していないと証明することは、ほぼ不可能だ(関連記事参照)。

そうした指摘を裏付けるかのように、アパレル大手である三陽商会や、TSIホールディングス、キングなどは、「さまざま調査を行ったが、実態が把握できない」としてウイグル綿の使用を中止することを発表した。

日本は制裁を課せる法整備を行うなど「正義」を示せ

中国の習近平・国家主席がウイグル弾圧に関する秘密演説の内容が記された秘密文書がリークされるなど、国際社会の目はこれから一層厳しくなるのは確実だ。

日本政府は人権問題担当の首相補佐官を新設し、中国に対して制裁を課せるような法整備が期待されていたものの、現状では「対話と協力」を訴える基本姿勢を根本的に変えていない。「何をもって正義とするのか」を国際社会に明確に打ち出し、「脱中国」加速させる政策にも取り組むべきだ。

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