《本記事のポイント》

  • 主権在民と国家の独立のために選ばれた魂
  • 主権在民のよき理解者
  • 中江兆民の目指した近代化とは

中国が台湾の防空識別圏(ADIZ)に軍用機を進入させるなど台湾への圧迫を強める中、台湾の蔡英文総統は、外交雑誌として権威のある米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ(11/12月号)に「台湾と民主主義のための戦い 変化する国際秩序の中での善き力(Taiwan and the Fight for Democracy : A Force for Good in the Changing International Order)」と題する論文を寄稿した。

論文の中で蔡総統は、台湾が中国の手に落ちれば、アジアの平和と民主的な同盟のシステムにとって「壊滅的な」結果を招くと警告。その上で、一点の迷いもなく民主主義擁護論を展開している。それこそが蔡総統が台湾を護るために戦う目的そのものだからである。

以下に、蔡総統の民主主義擁護論に関する主な主張を紹介しよう。

  • コロナウィルスにより、権威主義体制は、彼らの統治モデルの方が民主主義のモデルより適応力があると、かつてないほど確信を深めているようです。

  • 世界は新しいイデオロギーの衝突の矢面に立つ「リベラルな民主主義」について、再検証することを迫られています。

  • 台湾が陥落すれば地域の平和のみならず民主主義的同盟のシステムにとって壊滅的な打撃となります。それは価値における競争の中で、権威主義が民主主義よりも優位に立つことをも意味してしまうのです。

  • 台湾は軍事力を再編・近代化させてきましたが、それは安全保障上のパートナーのサポートを当然だとしてあてにせず、相応の負担を担い、自立して最大限の備えをすべきだと考えているからです。

  • 中国の圧力の下であっても、台湾は世界に対して「民主主義」は交渉の余地のないことだとはっきりと訴えてきました。

  • 私たちが民主主義を固く信じているのは、台湾の未来は台湾人によって決められなければならないという信念があるからです。

  • 台湾人の大多数が、民主主義は台湾にとって最もよい統治の方法であり、それを護るためなら、何でもする気概です。この信念は毎日試されていますが、台湾が存亡の危機にさらされた時、人々が立ち上がるのは間違いありません。

  • リベラルな民主主義的秩序と専制的秩序との世界的な競争の最前線にあって、台湾はアメリカやイギリスに習って、台湾民主基金を設立し、民主主義や人権の支援をしてきました。この民主基金は2019年に信教の自由のフォーラムを開催し、信教の自由の特別自由大使を任命しました。

  • 台湾は国際秩序に組み込まれてきませんでしたが、国際秩序において善き力となる準備があるのです。

 

主権在民と国家の独立のために選ばれた魂

幸福の科学の霊査で蔡氏の過去世は、自由民権運動のイデオローグの中江兆民であったことが明らかになっている。兆民は、ジャン=ジャック・ルソーの『社会契約論』を漢訳した『民約訳解』を発刊したことから「東洋のルソー」と呼ばれるようになった。

兆民は明治4年(1871年)、フランス留学中に、ルソーの『社会契約論』に出会う。兆民の思想は、『民約訳解』と知的格闘をする中で形成されていったといっていい。

もちろん留学した当時のフランスにおいて、殺戮につぐ殺戮となったフランス革命の爪痕を見てきたので、ルソー主義者になったわけではない。むしろ西洋哲学の全貌を把握する過程で、ルソーをその中に位置づけ主権在民の本来の精神を救い出したと言える。

当時の日本が表層的な文明開化の精神に踊らされ、民権運動が急進化する流れの中で、兆民の生存中にその哲学が日本の文化に接ぎ木され、内発的に受容されなかったのは残念である。だがその遺産は大正デモクラシーとして結実した。

主権在民のよき理解者

ルソーの『社会契約論』の最良の部分は「主権在民の精神」にある。国家の主役は、政治家でも官僚でもなく「国民」であるので、「国民が未来を決められなければならない」のである。

ルソーは多数派の専制でしかない「全体意思」と、多くの市民が「考える人」となった結果、集約された公共精神とも言うべき「一般意思」とを区別をしていたので、兆民も、そして生まれ変わった蔡氏も、そのことは十分知っての上で「主権在民」を訴えているとみてよいだろう。

その証拠に蔡氏は、この論文において信教の自由を守ることを強調している。信教の自由が守られることで少数派の権利は守られ、民主主義が暴政に転落するのを防ぎ、自由が担保されるのである。

この主権者を護るために、蔡氏は台湾防衛を急いでおり、その趣旨を10月10日の辛亥革命を記念する「双十節」(建国記念日)の式典で繰り返した(蔡氏は、永遠に堅持すべき4つの約束として、「自由と民主の体制」「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」「主権を維持し併呑を許さない」「台湾の未来は全台湾人の意志で決める」を挙げている)。

一方日本では、主権者である国民が防衛しようとしてもできない憲法9条が存在する。専守防衛の縛りから、中国の偽装漁船が尖閣奪取に動いた場合のグレーゾーン事態の法律も未整備だ。

だが台湾が陥落すれば日本は中国に隷従せざるを得なくなるため、台湾防衛は日本の国家主権にかかわる問題である。

アメリカではニュート・ギングリッチ元下院議長などが、台湾に最も近い日本が台湾を護る義務があると指摘し始めているが、台湾防衛を主権の観点から防衛すべきだと発言する政治家は日本には見当たらないようである。

敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を主張するところまでは何とかたどり着いたというところか。だが、9条2項を削除し「交戦権」を認めなければ、政治家は主権者である国民を護る意志があると国民に示したとは言えない。

台湾に目を転じれば、蔡氏は一つ前の過去世で培ったデモクラシーの思想を実践に移し、国民を護る気概を示している。

黒船来航の前に生まれ、日露戦争の3年前に病死した中江兆民は、当時の時代的要請に応えようとした。

その要請とは、欧米列強の帝国主義からの自国防衛するために対外主権を確立するとともに、憲法体制や議会制民主主義を確立し対内主権を確立することであった。

中江兆民の目指した近代化とは

西洋の圧迫に対して、一部の選良が国を統治するだけで国民が指示待ちでは、国家を担う気概を持つ国民は生まれない。それゆえ兆民は、国民に自由を平等に与えて、古代のギリシア市民のごとく国防にあたる国民を育てようとしたと言えるだろう。

「西洋からの圧迫」に際し、西洋を超えた本来の西洋的価値観の導入を目指した。これが兆民の目指した近代化である。

過去からの積み重ねなくして、全体主義国家の中国とぶれずに戦い続けることはできない。

幸福の科学の霊査によると、中江兆民は光の天使の一人。国父の孫文以降、天使が連綿とたすきをつなぎ台湾の自由・民主の系譜を護ってきたのである。

宇宙のメシア的存在であるメタトロンは、「『日本の決断』は、ものすごく重いですよ。(中略)今、『この英米型の価値観が来世紀以降も主導的になるか、ならないか』の分岐点なんですよ」と述べている(『メタトロンの霊言 「危機の時代の光」』)。

蔡氏はこの価値観を護ろうとしている。蔡氏が戦い続けられる背景を知ることで、日本も世界秩序を形成する「善き力」となれるよう願ってやまない。

(長華子)

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