2021年9月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第106回

釈党首

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

見上げればジェノサイド!?

日本の山をソーラーで埋め尽くすな

静岡県熱海市伊豆山地区で、豪雨により大規模な土砂災害が起きました。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

土石流の原因については、「違法な盛り土」と共に、「メガソーラー(大規模太陽光発電)の開発で山の保水力が失われたのではないか」との見方も出ています。一般的に、山の斜面でのメガソーラー開発が、敷かれた防草シートで雨水の流れが変わるなどして、がけ崩れなどに繋がることは、指摘されてきたことです。

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山林を切り開いて設置されたメガソーラー。写真提供:ピクスタ


菅政権「46%削減」の罪

こうした災害が今後、全国各地で起きる可能性が一層高まってきました。菅政権は「2030年の温室効果ガス46%削減」を表明し、火力発電比率を4割まで引き下げる方針です。

しかし、廃炉が進む原発は、全部再稼働したとしても2割程度。残りの4割以上を、太陽光を中心とした再生可能エネルギーで賄わざるを得ないのです。これは、日本中の山の斜面を太陽光パネルだらけにしても、なお達成できないでしょう。

もっとも「46%」という削減目標については、小泉進次郎・環境相がニュース番組で「おぼろげながら浮かんできた」と発言し、ひんしゅくを買いました。この「おぼろげな数字」とつじつまを合わせてエネルギー政策を策定するには、わずか9年間で太陽光発電を中心とする再エネが「爆増」するという、荒唐無稽な計画を立てるしかありません。

これにより、日本中にメガソーラーが敷き詰められれば、「災害を減らす」どころか、むしろ深刻な土砂災害を増やすことになりかねません。

しかも、「脱炭素」は日本経済にも大打撃を与えます。これまでも、日本の「再エネ」普及は、国民の莫大な代償によって成り立ってきました。民主党政権が導入した「再エネ固定価格買い取り制度(FIT)」により、太陽光発電のコストを、国民全体が負担する仕組みです。一般家庭用(使用量260kWh/月)の場合、2021年は年間で1万476円となっています。この国民負担の総額は、2030年に4.5兆円に達し、「46%削減」でさらに大幅に膨れ上がると見られます。

一般家庭はまだしも、企業では、地道な節電などでは追いつかない再エネ賦課金の負担に耐えかね、野菜工場などは倒産を余儀なくされたところも少なくないと聞きます。

ウイグル産パネルへの懸念

さらに危惧すべきは、ウイグル人の強制労働との関係です。

現在、太陽光パネルの中でも最も安価であり、大量に普及しているのが「多結晶シリコン方式」です。この心臓部にあたり、太陽光を反射する多結晶シリコンの8割が中国製であり、さらにその半分が新疆ウイグル自治区で生産されているのです。全世界で見れば、同シリコンのウイグル産のシェアは約45%と推計されています。

こうした指摘を受け、米商務省はすでに、ウイグルにある太陽光パネル5社を、「ウイグル族らへの強制労働や人権侵害に関与した」として、禁輸措置対象に指定しました。この結果、多結晶シリコンの価格は5倍に高騰。太陽光発電は「強制労働だから安かった」のです。

日本政府は、総額2.4兆円(2019年)もの賦課金で、太陽光パネルを普及させ、中国製パネルの輸入につなげてきました。これでは「グリーンな成長戦略」の本質は、「中国を太らせる」ことに他ならなかったのではないでしょうか。

このまま中国製パネルの輸入が増えれば、山々の斜面に並ぶメガソーラーを見上げるたびに「ジェノサイド」を思い出す──そんなことにもなりかねません。

そもそも、「CO2温暖化犯人説」はアメリカでも党派性の強い問題で、国民の半数近くの共和党支持者は、温暖化はフェイクだと考えています。

壮大な虚構を前提とした国策としてのCO2削減、再エネ推進は、百害あって一利なしです。冷静な国民の声で、政府に方向転換を迫る必要があります。

スイスでは6月、CO2削減に向けた法律が、国民投票で否決されました。脱炭素の莫大なコストを、炭素税や航空券への課税強化で賄うことに反対する国民が、過半数を超えたのです。

「脱炭素は世界の避けられない潮流」との言説に騙され、中国を利し、国家の経済やエネルギー安全保障、国土の安全を危険にさらすことは、断じてあってはならないのです。