《本記事のポイント》

  • 中国各地で相次ぐ「半ロックダウン」
  • 「ロックダウン」連発"したから"感染者が"少ない"のか
  • 年金統計からうかがえる大量の死者?

5月と6月に、中国広東省でロックダウンが実施された。

中国では一応、「ロックダウン(中国語では「封鎖」)」と「半ロックダウン(同「封閉式管理」)」の区別があるようだが、明確な違いは不明である。

後者は「建物全体を管理単位とし、隔離体を用いて建物を外部から遮断し、管理の範囲内で、建物領域に出入りする人や車両などの移動を制御・管理し、所有者や利用者に対して衣・食・住・交通などの面で、きめ細かなサービスを提供する」(百度百科)という。ならば、前者は、その「きめ細かなサービス」が提供されないということか。

いずれにせよ中国のロックダウン・半ロックダウンは、共に当局から強制力を伴う。日米欧では考えられないほどの厳しさである。

一例を挙げれば、2020年3月、孫春蘭副首相が武漢入りした際、マンションの住民が(政府の言っている事は)「全部ウソだ」と叫んだため、間もなくそのマンションは住民の出入りができないよう完全封鎖された。しばらくの間、そこの住民は買物さえ許されなかったのである。

中国各地で相次ぐ「半ロックダウン」

中国では昨年夏頃から、「新型コロナ」の蔓延が落ち着き始めたかのように報じられている。だが実は、この半ロックダウンが何度も実施されてきた(「2019冠状病毒病中國大陸疫區封鎖措施」)。

2020年後半だけを挙げても、以下の地域で実施されていることが分かっている。

(1) 7月16日、新疆ウイグル自治区のウルムチ市で開始(終了日不明)。

(2) 7月24日、遼寧省大連市で開始(終了日は8月10日)。

(3) 9月14日、雲南省瑞麗市徳宏タイ族チンポー族自治州で開始(同月21日に終了)。

(4) 11月21日、内モンゴル自治区フルンボイル市で開始(終了日不明)。

(6) 12月13日、黒竜江省牡丹江市で開始(終了日不明)。

少なくても5地域で半ロックダウンが行われ、うち3地域では、いつ終了したか確認できていない。ひょっとして、今でも半ロックダウン状態が続いていないとも限らないだろう。

周知の如く、中国では当局が情報をコントールしているので、住民によるSNSでの情報が制限されている。したがって、これら地域の実態を知るのは難しい。

今年に入っても、春節(旧正月)以前に、別の3地域で半ロックダウンが行われたことが分かっている。

(1) 1月5日、河北省石家庄市で開始(終了日不明)。

(2) 1月11日、黒竜江省の綏化市で開始(終了日不明)。

(3) 1月12日、河北省ケイ台市と廊坊市で開始(終了日不明)。

そして、最近、広東省の少なくとも2地域で、通常のロックダウンが行われた。

(4) 5月29日、広州市で開始。

(5) 6月19日、深セン市で開始。

「ロックダウン」連発"したから"感染者が"少ない"のか

こうしたロックダウン・半ロックダウンを、「中国は感染被害が少なくても、迅速かつ徹底的に封じ込めるので、感染拡大を抑え込んでいる」かのように見る向きもある。

例えば今年初め、日本のあるメディアは、「(中国)政府はコロナを封じ込めるため、武漢で最初に実践した厳格な行動制限や隔離などの手法に自信を強めている。感染が再び広がる河北省などでも『武漢モデル』を使って感染を抑え込む構えだ。欧米や日本などに比べて感染者数は桁違いに少ないが、市民生活への影響は小さくない」と報じている(1月24日付東京新聞)。

この記事は、米ジョンズ・ホプキンス大学が集計した数で判断したのだろう。しかしこうした統計は、中国が発表した数字を基にしている。嘘情報を鵜呑みにして、垂れ流している感も否めない。

年金統計からうかがえる大量の死者?

実際に、中国は欧米に劣らずコロナ被害に苦しんでいる可能性が高い。

昨年、本連載において、武漢市内の葬儀場でのご遺体焼却数から、2020年1月末から2月初めのたった1週間で、同市・同期間にコロナ死した人は約2000人と推測した(関連記事参照)。

また2021年2月17日付「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は「中国湖北省の年金統計は、コロナ死に対する疑念を引き起こす」という記事を掲載した。そこでは、「2019年12月、『新型コロナ』のパンデミックが初めて発生した湖北省の民政部が発表したデータによれば、(コロナが武漢市とその周辺地域を襲い)省内のロックダウンを引き起こした2020年第1四半期に、約15万人の高齢者の名前が年金支給対象者リストから『消えた』ことが明らかになった」と報じている。

もちろん高齢者なので、コロナ死以外の病死、事故死、自然死等も含まれるだろう。だが、それらを考慮しても、湖北省1省だけでこの数である。全国(31省市)でどれほどの人達がコロナで亡くなったのか、想像もできない。当然、感染者は、その何十倍もいるはずである。


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アジア太平洋交流学会会長

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。


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