2020年12月号記事
地域シリーズ
北海道は世界の食糧庫になる
北海道には、まだまだ発展へのフロンティアが残されている。
その可能性に迫った。
(編集部 駒井春香、竹内光風)
北海道にはロマンがある─。明治維新直後、多くの屯田兵が開拓に向かった。その開拓の精神は、北海道の繁栄の基礎となっている。
日本の食糧自給率が40%前後を推移する中で、北海道は約200%。それに加えて、12年連続、都道府県の魅力度ランキングでトップを飾るなど、観光産業も盛んだ。
しかし、そんな北海道にも"魔の手"が迫っている。少子高齢化により農家や酪農家などで後継者が減少。新型コロナウィルス感染拡大防止のための自粛要請などは、観光産業にも大きな打撃を与えている。
密かに深刻化しているのが、中国資本による土地や水源、食糧の買い占め問題だ。数年前から問題視されているものの、一向に収束の気配を見せない。
そんな北海道の危機から脱する活路を「農業」「食」「人財」「中国問題」から考えてみた。
北海道の守りたい「農業」の未来
北海道の農業における問題点と、その解決策を探った。
北海道が抱える大きな問題の一つが、少子高齢化や後継者不足で農業従事者が減り続けていることだ。
一方で、Uターンして就農する人もいる。高校卒業後に札幌で働いたものの、25歳で網走に戻り、家業である農業を継いだ男性(50代)はこう話す。
「最初はいずれ札幌に戻ろうと思ったけど、だんだん農業の創造性に魅せられて。青年団活動も活発で、同世代の仲間と協力し合えたのも大きかったね」
当初は約43ヘクタールだった畑も、創意工夫と経営者としての判断で、今は54ヘクタールまで増やした。
夫婦で37ヘクタールの田畑を作付けしている岩見沢市のある農家では、2年前から次男が一緒に、農業に取り組んでいるという。その理由を聞いた。
「高校で進路を決めるくらいから、『(実家の農業)やろうかな』と自然に思い、農大に通いました。同級生の中には、同じく実家で就農した仲間も多いです。作地面積は来年、10ヘクタールほど増やす予定ですが、いずれは経営者となって、もっともっと面積を増やし、『稼げる』農業がやりたいと思っています」
父親は「頼りがいがあります。次男が一緒にやってくれて、本当に助かっています。経験を積んで、経営者としての自覚を持ち、徐々に規模を広げてほしいですね」と声を弾ませる。
以前は減反政策などから、作る農作物が限定されることもあったが、今はほぼ自由な栽培が可能だという。インターネットの普及などで販路も広がり、ビジネスとしての側面も大きくなった。
GPSを使ったトラクターなど、農機具の発達で肉体への負担も軽減され、「3K」のイメージは払拭されつつある。実家が農家の若者たちに、「家業を継ぐ」という進路は、かつてより選択しやすくなっているようだ。