「武士道と云うは、死ぬ事と見付けたり」
『葉隠』(佐賀藩士・山本常朝著)に登場する有名な一節だ。武士道の神髄を示すものとして、多くの日本人が知る名文だろう。
同書は、江戸時代の中期に「戦をしなくなった武士が、どう生きるべきか」を考え、武士の道を定義したものだ。その後、日本独自の精神を世界に広げたのが、国際連盟の事務次長を務め、五千円札の肖像にもなった新渡戸稲造の『武士道』だ。
新渡戸は、ベルギーを訪問した際に「あなたがたの国の学校では、宗教教育がないのに、一体どのようにして子孫に道徳教育を授けるのか」と聞かれ、答えに窮し、愕然とする。人の道である教訓を、学校では習わなかったからだ。
その後、新渡戸は自らの善悪の基準をつくり出した要素を分析し、米カリフォルニアで療養している際に、英文で本書を執筆する。キリスト教徒である新渡戸が、日本神道や仏教、儒教の価値観をベースにまとめ、武士が消えた明治時代に「武士道の復活」を試みた。
今も多くの人に読み継がれているのは、新渡戸が病になり「死」を意識した状態から書き上げ、武士の死生観に迫ったためであろう。
しかし、それから時が経ち、武士すらイメージがしづらくなった現代で、「どのように武士道を生活スタイルに取り入れるべきか」が分からなくなっているだろう。新渡戸が即答できなかった質問についても、果たして現代人は、答え切ることができるのだろうか。
戦がない現代人の武士道
戦をしない現代において、武士道をどのように捉えれば、それを継承できるのか。大川隆法・幸福の科学総裁は10月末、「現代の武士道」と題した法話を行い、現代人にも分かりやすく「武士道」を示した。
人間は、死ぬことから逃れられない運命を背負い、いつ死ぬかも分からない。朝、目覚めた時にあった命は、夕方になると消えてなくなっているかもしれない。大川総裁はそうした無常の世界で、真剣勝負の思いで生きることが重要だとして、こう指摘した。
「 なけなしの力となけなしの時間の中で、『一手を打つことは何ができるかどうか、何か考えることはできるか』。こういうことを常に問うていただきたいです。毎日毎日そういうつもりで一日一生で生きてたら、やっぱり他の人とはかなり違ったものが出てくるだろうというふうに思うんですね 」
武士道で言う「正義の心」
ある時、温和な性格で知られる新渡戸が激しく憤った。それは、自由の国であるはずのアメリカが、1924年に白人以外の移民を禁じる法律を制定し、アジアからの移民の大半を占めていた日本人を意図的に排除したからだ。
新渡戸はアメリカを強く非難し、「この法律が撤廃されるまでは、二度とアメリカの土を踏まない」と公言した。国際連盟での任期を終えた際は、アメリカを経由せず、インド洋周りで帰国したほどだ。
正義にもとる行為は、断じて許さない――。それが、日本人が古来、大切にしてきた武士道精神の一つだ。
翻って、現代の政治を見ればどうか。例えば、香港問題。自由の国であるはずの日本政府は、国際ルールを踏みにじり、香港の「一国二制度」を崩壊させている中国政府を真っ向から批判せず、目を背けている。
大川総裁は、「 武士道が立っている時は、やっぱり何が正しいかということがあったと思うのです」「自分の考えが正しくて、世のため、人のため、神仏のためであると思ったら、剣を抜かなければいけないこともあったと思います。戦後七十四年余り、足りないのはこの武士道的正義の心です 」と語り、戦後の日本人に欠けてしまった精神性を指摘した。
日本は大国としての使命を
戦前の日本は、気高い精神と誇りを持ち、アジアを代表する大国として、多くの国々から尊敬を集めていた。そのベースには間違いなく、武士道があった。当時の日本が直面した「白人至上主義という人種差別」に立ち向かったのも、その精神があったからこそだ。
現代でも、中国や北朝鮮などでは、宗教や人種などの差別が広がっている。現代の日本は、大国としての使命に目覚め、正義を貫くべき時が来ているのではないか。
法話では、以下のようなポイントの言及もあった。
- 「間違っている言動」を間違いと指摘する際の心得
- 自己保身に陥らないために何が必要か
- 武士道と松下幸之助
- 「勝ち負け」を超えた世界とは
- 潔く、筋を通す生き方の大切さ
- 3000回を超える説法を行う大川総裁の心構え
- 大きな使命があるほど、乗り越える壁が大きい
ここに紹介したのは法話のごく一部です。
詳しくは幸福の科学の施設で、ぜひご覧ください(下記参照)。
・幸福の科学サービスセンター Tel:03-5793-1727
火~金/10:00~20:00 土日祝(月曜を除く)/10:00~18:00
・同グループサイトの支部や精舎へのアクセス
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