《本記事のポイント》

  • 幅広いテーマで行われた日米首脳会談
  • 「米中貿易戦争」は他人事ではない
  • 日本にとって大事なのは「外交の鉄則」を立てること

安倍晋三首相とトランプ米大統領による日米首脳会談が27日行われた。

終了後の共同記者会見では、安倍首相が、北朝鮮による拉致問題の解決に向けた無条件の日朝首脳会談に意欲を示し、トランプ米大統領が、イランの体制転換も核開発も望んでいないことを述べるなど、幅広いテーマで会談が行われたことをうかがわせた。

懸案の日米貿易協議については、トランプ氏が安倍首相に配慮し、夏の参院選以降の合意を目指すことになった模様だ。

来日直後、トランプ氏が「日米の友好関係はかつてなく緊密だ」と強調するなど、今回の会談は、日米の絆の深さを世界にアピールした形だ。

「米中貿易戦争」は他人事ではない

自由や民主主義の価値を共有する2つの大国が友好関係を深めることは望ましい。

ただ、日本を取り巻く国際情勢を考えた時、日本がもっとも重視しなければいけないのは、「中国問題」への対応だ。日本の未来は中国の動向に大きく左右される。この意味において大事なのは、今後日本が「米中貿易戦争」にどのようなスタンスで臨むか、という点だろう。

暗礁に乗り上げている米中貿易協議について、来日中トランプ氏は、「中国は合意にこぎつけたいのだろうが、アメリカはそう思ってはいない」などと中国をけん制し、歩み寄るよう促した。

一方、安倍首相は会見で、「(米中)両国の安定的な経済関係は極めて重要。両国が対話を通じて問題解決することを期待する」と話した。

会談で、貿易戦争についてどこまで突っ込んだ話し合いが行われたのかは分からない。しかし、日本の安全保障を脅かす中国問題について、「(米中)両国が対話を通じて問題解決することを期待する」レベルでは、他人事のように聞こえる。

日本にとって大事なのは「外交の鉄則」を立てること

本来、日本は、米中貿易戦争において、アメリカへの支持を鮮明にすべきである。

むしろこのスタンスを明確にすることが、今回の首脳会談でもっとも優先度の高いものだったのではないか。

トランプ氏が仕掛けた貿易戦争は、単なるアメリカのエゴによるものではない。自由や民主主義という価値を踏みにじる軍事独裁国家・中国が、他国の技術や利益を盗み、それを国内の監視体制や人権・宗教弾圧、日本や台湾、アメリカなどを狙う軍事兵器に使っている。

日米友好のアピールも大事だが、中国にもいい顔をしてご機嫌をとる「八方美人外交」は、もうやめるべきだろう。国際社会から信頼を失うだけでなく、中国との関係に頭を悩ます日本の企業にも、誤ったメッセージを送り続けてしまう。スタンスを明確にすることではじめて、国民に対し、憲法改正や国防強化などの必要性を訴えることができる。

中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船に体当たりした事件が起きた直後の2010年10月、大川総裁は沖縄で行った法話「この国を守る責任」の中で、日本の外交についてこう指摘している。

今、日本にとって大事なのは、『外交の鉄則』をきちんと立てることです。そして、『今後、日本の外交は、このような鉄則の下に行う』ということを、あらかじめ、国内および外国に対し、明確に示しておくことが大事なのです。それをせず、場当たり的に『何とか片付けよう』とか、『話し合いで済ませよう』とか、そのようなことをしていると、しだいに、おかしな交渉に持っていかれ、何をやっているのかが分からなくなるのです 」(『 平和への決断 』所収)

この言葉は、今の日本にも当てはまる。外交の鉄則を持たない国は、ただただ情勢に流され続ける。そんな後進国のようなスタイルから抜け出し、日本はアジアや世界の平和と繁栄をリードする大国としての責任を果たす必要がある。

(山下格史)

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