2019年5月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第79回

幸福実現党党首

釈量子

(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。

釈量子のブログはこちらでご覧になれます。

https://shaku-ryoko.net/

新しきメイド・イン・ジャパン

「メイド・イン・ジャパン凋落の30年」

平成を総括するにあたり、こんな言葉を、提示してみたいと思います。

かつて日本の製造業といえば、トヨタ、ホンダ、日産を筆頭とする自動車産業、そして、松下(現・パナソニック)、ソニー、東芝を筆頭とする電器産業などが、世界を席巻していました。

雲行きが変わる分岐点は、1985年の「プラザ合意」。「アメリカの巨大な貿易赤字を解消する」という圧力を受け、日本政府は円高に舵を切りました。1ドル=240円が約1年で120円になるという大事件で、輸出にブレーキがかかります。

そんな中、多くの日本企業は"円高ハンデ"のある国内から逃れ、中国などに工場を移転。さらに、現地でつくった安い製品を日本になだれこませ、国内の製造業は「空洞化」「弱体化」していったのです。

「メイド・イン・ジャパン」は、「技術」でも陰りを見せ始めています。「2位じゃダメなんでしょうか?」と言われたスパコンも、今や2位どころか7位に転落。上位は軒並み米中に占められ、日本の最高速度マシンは、中国の最高速度マシンに5倍もの性能差をつけられています。

世界は「製造業戦国時代」

多くの日本自動車メーカーが中国などの途上国に進出している。写真:Imaginechina/アフロ

日本の製造業が沈む一方、世界は「製造業戦国時代」に突入しています。

中国は「製造2025」を掲げ、ドイツは「インダストリー4.0」を掲げ、トランプ米大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」も、「製造業の復活」を主軸に置いたものです。

さらに近年は「AI(人工知能)」の開発競争も熾烈です。

例えば、AIを動かすのに必要なのが「AIチップ」です。この開発に、アメリカからはアップル、アマゾン、グーグル、テスラ、IBM、インテルなどが、中国からはアリババ、バイドゥなどが参入し、しのぎを削っています。

同分野に取り組む日本企業は、スパコン「京」を開発した富士通くらいのもの。「製造業の次の主戦場」といわれる領域で、日本の存在感はほとんどありません。

こうした技術は、「ミサイルの軌道計算」「サイバー攻撃」「ロボット・ドローン兵器」などの軍事に転用され、「核に匹敵するゲーム・チェンジャー」となります。安全保障面でも、国家の盛衰を分けるのです。

「ものづくりの英雄」再び

幸福実現党の「正義」「繁栄」ビジョンを示す

未来をかけた戦い

『未来をかけた戦い』
幸福を実現するために

繁栄の国づくり

『繁栄の国づくり』
日本を世界のリーダーに

共に釈量子著
幸福の科学出版

次の時代、日本は「メイド・イン・ジャパンの『失われた30年』」を逆回転させるべきです。

近年、日本企業に「国内回帰」の動きが見られ、海外生産を行っている企業の約14%が1年間で国内に生産を戻しています(*)。背景としては、途上国の人件費が上がり、現地生産の旨味が減ったことなど。しかし、日本の世界への遅れを考えると微々たる動きと言わざるをえません。

今、求められるのは、「製造2025」「アメリカ・ファースト」に比肩する、「新しきメイド・イン・ジャパン」ともいうべき構想です。そして、「全方位」から製造業を支援する国策です。

トランプ政権の製造業支援策は、「税制」から始まりました。「法人税減税」は有名ですが、その他にも、「海外子会社からの配当課税の停止」「海外から生産拠点を戻す際にかかる税金の減税(レパトリ減税)」など、ありとあらゆる方法で、国内回帰を促しています。

また、「STEM教育」(科学、技術、工学、数学)」を普及させ、若者に「製造業の仕事は単調で、安月給だ」という考えを覆させる啓蒙活動も行っています。

日本も「税制」「教育・啓蒙」「規制緩和」「研究投資」「貿易協定の見直し」など、あらゆる政策を総動員することを、「アベノミクス」に相当するような柱とすべきです。

わが国には、かつての松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎、あるいはアメリカのスティーブ・ジョブズ、イーロン・マスクにあたる存在が見当たりません。再び「ものづくりの英雄」を生み出し、平成の凋落を完全復活させようではありませんか。

幸福実現党は今春、立党10周年を迎えます。このたび、党の「正義と繁栄」への理念・提言をまとめた、『未来をかけた戦い』『繁栄の国づくり』の2書を上梓しました。戦後や平成の総括として、そして新たな時代への設計図として、ぜひ手に取っていただければ幸いです。

(*)経済産業省が2018年5月に発表した「ものづくり白書」による。