《本記事のポイント》
- 県民投票の選択肢が単純すぎるという指摘も
- 普天間基地問題をぶり返すことは、韓国の徴用工問題と同じ
- 政府は、沖縄の基地負担軽減だけでなく、「中国の脅威に対処」と明言を
沖縄県名護市・辺野古基地をめぐり、24日に投開票を迎える県民投票。さまざまな論評が入り乱れ、投票の評価について、どう考えればいいのか分かりづらくなっている。投票日を前に、一度、整理しておきたい。
宜野湾市・普天間基地の辺野古への移設は、1996年に、日米両政府が合意した内容に基づいたものだ。代替基地をつくる代わりに、"世界一危険な基地"と言われる普天間基地を返還することになっていた。当初の返還期限は2001年だったが、その後2014年、2025年度以降にずれこんでいる。今回の移設によって、返還が実現すると期待されている。
だが、県民投票で問われているのは、「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択。反対が大数を占めれば、これまでの普天間基地が固定されることになるのだが、その見通しが分からない回答形式となっている。
その意味で、「投票の選択肢があまりにも単純すぎる」と指摘する声があがっている。
国内論理を優先すべきではない
反対派は、「移設を"強行"することは民主主義や地方自治の侵害」と主張している。移設反対派の玉城(たまき)デニー知事が当選しても、政府は計画を推進してきたためだ。
確かにそうした見方もできるだろう。しかし、基地移設は国政問題であり、日米政府の合意の上で進められているものだ。沖縄県の自治体は、それを判断する責任を負えないにもかかわらず、反対派に肩入れするような行為はあまりに無責任と言える。
また、日米政府が合意したものを、「国内の論理」を優先して覆す試みは、韓国の徴用工問題の蒸し返しと同じく、問題があるのは明らか。日本が韓国のように国内の論理を優先して、移設計画を中止すれば、日米同盟に亀裂が入るのは間違いない。アメリカ政府は激高するだろう。沖縄の自治体がその責任をとれるというのだろうか。
政府は「中国の脅威に対処」と明言を
一方、基地移設を進める日本政府も、「不信感」を呼ぶような対応を行っている節がある。基地の負担軽減が注目されがちだが、現下の情勢に目を転じれば、基地移設の本質は「中国への脅威にいかに対処するか」ということである。
政府は、「中国の脅威から日本を守るために、基地移設を進める」というメッセージを発信すべきではないか。基地移設の本来の目的を覆い隠すことが、結果的に、不信感を募らせる形となっている。中国を刺激したくない意向があるのだろうが、軍拡を押し止めることの方がはるかに重要だ。
県民投票には多くの問題点がある。もし県民に民意を聞くのであれば、中国の脅威にどう対応するかを問う必要がある。そうしなければ、事の本質が見えなくなってしまう。
(山本慧)
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