尖閣諸島(左から魚釣島、北小島、南小島)( Wikipedia より)。
《本記事のポイント》
- 尖閣を失うと、イランに埋蔵される量の原油を失う
- 尖閣を失うと、石垣島・宮古島の住民が危険にさらされる
- 尖閣を失うと、台湾が中国の手に落ち、日本に原油が入りづらくなる
「とにかくうるさい」
中国の都市を訪れると、まずこんな感想を持つ。何がうるさいのかというと、常に街中で、車のクラクションが「ブーブー」と鳴り響いているのだ。東京の"喧騒"など、静寂に思えてくる。
要するに、誰も「道を譲る」ということをしない。車同士が鉢合わせたら、互いにクラクションを鳴らし合い、どちらが気迫勝ちするかのチキンゲームに入る。これが一種のルールのようになっている。
日本社会で身体に染み付いた「譲り合いの精神」で街を歩くと、どこにも進めず、時には突き飛ばされ、時には車に轢かれそうになる。
同じように、もし日本人が「譲れば、相手も譲り、争いが避けられる」という日常の感覚を、中国との外交にも当てはめて考えているなら、とんでもない間違いにつながる。
尖閣の接続水域に2度目の軍艦
沖縄県・尖閣諸島の接続水域内にこのほど、中国の潜水艦・軍艦が入域し、日本政府は抗議した。中国軍艦が尖閣諸島の接続水域に入るのは、2016年以来2回目だ。
尖閣諸島をめぐる衝突が増えるにつれて、「争うよりも、小さな無人島くらい中国に譲ればいい」という声は増えるだろう。
元旦のテレビ番組で、お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔氏も「(尖閣諸島を)僕は、取られてもいいです。僕は明け渡します」と発言し、物議を醸した。
「尖閣を失うとは、どういうことなのか」を、国民が理解する必要があるのではないか。
(1)イランに埋蔵される量の原油を失う
尖閣諸島の下には、イランの埋蔵量に匹敵する原油が眠っている。
その量、1500億バレル。日本における1年間の原油輸入量が15億バレルであることを考えると、100年分の資源だ。
つまり、尖閣諸島を明け渡すことは、ただの無人島を失うことではなく、国民の巨大な財産を失うことになる。「国民の財産」を守ることこそ、政府・国家の存在理由だ。
(2)石垣島・宮古島の住民が危険にさらされる
尖閣諸島を明け渡した時に失うのは、原油だけではない。
わずか170キロ南方にある石垣島に住む、5万人の日本人が危険にさらされる。
中国は魚釣島などに、レーダーサイトなどを建て、軍事拠点にするだろう。そこから石垣島を急襲する方が、400キロ近く離れた沖縄から自衛隊が駆けつけるより早い。住民を人質にすれば、自衛隊は島を奪還できない。
その次に襲われるのは、宮古島だと言われている。
(3)台湾が中国の手に落ち、日本に原油が入りづらくなる
これらの島々が奪われることは、次に台湾が中国の手に落ちることを意味する。
台湾併合は中国の長年の悲願だ。そのためには、駆けつけて来る米軍を、阻止しなければならない。その海上封鎖が行われるのが、尖閣諸島、石垣島、宮古島などがある海域となる。中国軍は、海域を哨戒する海空の部隊を展開し、機雷なども撒く。尖閣諸島などを軍事拠点化することは、その前提条件となる。
台湾が併合されれば、今度は、日本に原油が運ばれてくるシーレーンがいつでも封鎖できる状態になる。またもや、日本全体の安全が脅かされる。
尖閣はただの無人島でもなければ、ナショナリズム的な意地の張り合いの舞台でもない。国民の財産、安全を守り、アジアの自由を守るための、橋頭堡なのだ。
(馬場光太郎)
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