写真:陸上自衛隊HPより
南スーダンでの日報問題を引き金に、稲田朋美防衛大臣、防衛省事務次官、陸上幕僚長が辞任した。だが、日報問題のような"ささいな"問題を議論している場合ではない。
それよりはるかに大切なのが、国防強化の議論だ。というのも、今のままでは、他国から侵略された場合、自衛隊は日本を守れない可能性が極めて高いからだ。
7月29日発売の本誌9月号では、自衛隊の実態を伝える「自衛隊トリビア」を紹介した。トリビアとは雑学的な豆知識のことだが、これを読んだある女性は「自衛隊がとてもまずい状況にあると分かった」と感想を語っている。
本記事では、本誌9月号で紹介し切れなかったトリビアを紹介する。
※編集部は、現役の自衛官や自衛隊OBの方に取材し、自衛隊トリビアを作成。20~70代の男女20人にアンケートを行った。驚きの度合を「えー」とし、1人につき「0えー」から最大で「5えー」の間で評価してもらった。
憲法9条をそのままに、「自衛隊」を明記しても……
トリビア(1) 安倍首相の「憲法改正案」では、自衛隊の実態は何も変わらない : 63えー
安倍晋三首相は、今の憲法9条を維持したまま、新しく「自衛隊」を書き込む形での憲法改正を唱えている。だが、「軍隊は持たない」「戦わない」と宣言している中に、「自衛隊」を明記して、どうするつもりなのか。
元自衛隊幹部も「北朝鮮のミサイルなどの脅威が迫る中で、言葉遊びはもうやめるべきだ」と指摘する。
やはり、アメリカ頼り……
トリビア(2) 日本は北朝鮮から攻撃されても、敵基地をすべて叩けない : 61えー
憲法9条があるために、自衛隊の装備は防衛のためのものばかりで、敵基地を攻撃する能力はほとんどない。
例えば、北朝鮮への爆撃に回せる戦闘機は50機程度と言われているが、その数では、同国の基地をすべて破壊することは到底できない。日本はアメリカの力を借りなければ、一方的に攻撃され続ける。
核兵器の脅威が再び日本を襲う
トリビア(3) 東京に核ミサイルが落ちれば、42万人死ぬ : 61えー
マイケル・ユー著『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』によると、東京の国会議事堂の上空で核ミサイルが爆発した場合、死者約42万人、被害者約81万人に上る。大阪の梅田であれば、死者約48万人、被害者約88万人になるという。
日本は「専守防衛」を掲げているが、もし核ミサイルで攻撃された後に反撃しても、すでに、大勢の国民が亡くなっている。広島、長崎の過ちを繰り返すことになりかねない。
ミサイルを撃ち落としても、被害者多数
トリビア(4) たとえ、PAC3でミサイルを撃ち落としても、国民に被害が出る : 57えー
弾道ミサイルを迎撃する地対空誘導弾パトリオット「PAC3」の射程は、半径20キロ程度と言われている。たとえミサイル迎撃に成功しても、周囲には、撃ち落とされたミサイルの鉄の破片や燃料が降り注ぐ。つまり、ミサイルを撃ち落としても、国民は無傷ではいられない。
憲法では、自衛隊は存在しないことに
トリビア(5) 自衛隊の存在は、憲法で認められていない : 49えー
憲法には、「自衛隊」という言葉は一言も出てこない。そればかりか、憲法9条で、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と、日本は「軍隊を持たない」「戦わない」と宣言している。
つまり、日本政府は、国内外に堂々と「日本政府は国民を守りません!」と言っているようなものだ。
こうした状況を見て分かるように、「今の自衛隊のままで、日本を守りきれる」という幻想は、捨てた方がいい。すぐにでも国防強化に取りかからなければ、近い将来日本は、北朝鮮に核で脅され、覇権拡大を目指す中国の占領下に置かれてしまうだろう。
中国の軍事的脅威が迫る中、短期間で抑止力を高めるために、アメリカの核兵器を日本でシェアする「核シェアリング」も検討すべき時期に来ている。
(山本泉)
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