《本記事のポイント》

  • ミャンマーと中国が、石油パイプラインの輸送開始で合意。
  • 背景には、ミャンマーの経済不振がある。
  • 日本はASEAN諸国との経済・防衛面での連携強化を。

ミャンマーが中国に歩み寄っている。

ミャンマーのティン・チョー大統領はこのほど、中国・北京で習近平国家主席と会談し、パイプラインを用いた原油輸送開始などについて合意した。このパイプラインは、2015年に完成していたが、輸送開始の時期については、当時のテイン・セイン政権が政治的に棚上げしていた。

また、会談と同日、ミャンマー国家顧問府は、中国政府が5月に北京で開く「一帯一路」サミットに、アウン・サン・スー・チー国家顧問が出席することを明かした。

期待されていたスー・チー氏だったが……。

1950年代以降、ミャンマーは軍事政権の統治が続いてきたが、その間の最大の後ろ盾は中国共産党政権だった。しかし、2011年に大統領に指名されたテイン・セイン氏は中国の支援による水力発電所建設や今回稼働したパイプラインなど、エネルギー協力を棚上げ。逆に、欧米や日本などに市場を開放して投資を呼び込んだり、インドとの協力を模索したりした。

ただ、2015年の総選挙前に、スー・チー氏は訪中。スー・チー氏率いる国民民主同盟(NLD)が圧勝すると、16年の政権発足後、最初の外相会談の相手は中国の王毅外相だった。

スー・チー氏は「私たちは近隣国だけでなく、全ての国々と友好関係を築いていく方針です」(Radio Free Asiaより)と発表していた。だが、その後、中国からの経済支援のウエイトは増す一方だ。

中国は、「一帯一路」構想の実現に一歩近づいた

背景には、ミャンマー経済の低迷がある。

ミャンマー政府は内戦終結に向けた和平協議や、いまだに強い影響を及ぼしている軍部の対応に追われ、低迷する経済への対応が遅れている。国内では物価高騰、通貨下落などが相次ぎ、国民からの不満の声が噴出している。

世界銀行によれば、ミャンマーの経済成長率も2015年度の7.03%から、16年度は6.5%に落ちた。この背景として、夏の洪水の影響が指摘されているが、インフラ整備の遅れや輸出の低迷も否定できない。

また、スー・チー氏は中国との国境付近の少数民族武装勢力との和平を第一課題に掲げているが、国軍との戦闘が続く。沈静化のために、中国の支援を得たいという思惑もある。

こうした状況のミャンマーを、中国はうまく取り込もうとしているようだ。

今回、稼働が合意されたパイプラインは、ミャンマー西部の港と中国南部までを結んでいる。これにより、中国は陸路におけるエネルギー供給ルートを確保したことになる。領土問題で紛糾している南シナ海を通る従来の「海路」ではなく、「陸路」でも原油を運ぶことができるからだ。

中国が世界経済の中心的役割を担う、アジア、ヨーロッパ、アフリカ大陸にまたがる一大経済圏の構築を目指す「一帯一路」構想の実現に、一歩近づいたと言える。

「中国の考え方を全世界に広げたら、どうなるか」

「21世紀における中国最大の目標は、世界一の強国になることだ」

これは、中国軍事戦略研究の第一人者であるマイケル・ピルズベリー氏の著書『China 2049』の一節だ。中国がアメリカを凌ぐ世界大国になったらどうなるか。

大川隆法・幸福の科学総裁は著書『正義の法』で、中国について次のように述べている。

『中国の考え方を全世界に広げたら、どうなるか』ということを考えたとき、『不幸になる国民や民族が非常に増える』ということが明らかに分かります。(中略)『あることを、ほかの人がまねしていき、それが広がっていったとき、より大きな善を生むか、生まないか』ということを想像することはできます。それによって『善か悪か』を判断することが大事なのです

ミャンマーのように、経済的な事情で中国に歩み寄らざるを得ない国が増えることで、中国の覇権拡大が進んでしまう。アジアの平和を守るためにも、日本としてもASEAN諸国に対する経済面、防衛面における連携を強化するとともに、発展途上の各国の経済的自立を促す必要があるだろう。(智)

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