東海地方を中心とするブロック紙で、名古屋圏では圧倒的なシェアを誇る「中日新聞」が、参院選をめぐる報道で、幸福実現党の候補者を取り上げない「差別的な報道」を続けている。

中日新聞は、今年の参院選公示日翌日の23日付の愛知県内版で、愛知選挙区の立候補者の第一声を各人写真入りで紹介した。ところが、候補者9人のうち、幸福実現党の中根裕美候補だけを報じなかった(写真参照)。また、同日付の岐阜県版でも、岐阜選挙区の立候補者の第一声の記事で、候補者3人のうち、幸福実現党の加納有輝彦候補のみを紹介していない。

第一声を伝える紙面で、幸福実現党の候補者だけを報じない中日新聞・愛知県内版。

「名簿ではちゃんと載せています」

こうした報道に疑問を抱いた中日新聞の読者の声が、本誌に寄せられたため、本誌は、中日新聞に電話取材を行った。

同紙の弓削雅人・選挙調査室長は本誌の取材に対し、「幸福実現党を意図的に排除するような報道はしておりません。新聞が特定の候補者を名簿に掲載しないというのは立候補の事実を曲げてしまうので、名簿ではちゃんと載せています。それ以外の、どの候補をどのように取り扱うかはメディアとしての編集権の問題です」と、あくまでも名簿には掲載していると繰り返した。

ちなみに、弓削室長が言う「名簿」とは小さな囲みのもので、これをもって「公正な報道」と主張している(写真参照)。

赤丸で囲んでいる部分が、中日新聞が言う「名簿」。これをもって「公正な報道をしている」と言い張るのは、公正・公平な報道を旨とする新聞社として許されるのか。

紙面を見ると、8人の写真しかないため、一見8人しかいないように見える。あえて幸福実現党の候補者のみを外した理由を聞くと、弓削室長は「我々の報道の方針としては、政党要件を満たしていることを条件として、ニュース価値があること、政治的な実績や影響力を考慮して、メディアとしての報道の方針のもと、判断しています」と答えた。

そもそも政党要件とは、「国会議員5人以上か、または議員1人以上がいる上で、直近の国政選挙で2%以上の得票をした政党」というもので、これは単に、政党助成法が定める政党交付金をもらえる基準ではあるが、マスコミの報道基準とはまったく無関係だ。実際、中日新聞は、この要件を満たさない地域政党「減税日本」の候補者を掲載している。

この件について尋ねると、同氏は「政党要件を満たしていない人物でも、政治的実績がある人物や著名人は記事で取り扱います」と答えた。つまり、ニュース価値や政治的影響力がある人は載せるが、影響力がない人は載せないということだ。

他紙はすべての候補者を紹介しているのに……

では、「ニュース価値」や「影響力」はどのように測ることができるのか。

弓削室長は「それについて明文化はしていませんが、選挙の得票数などの数値で一概に測れるものでもなく、ケースバイケースだと思います」と言葉を濁した。

朝日、読売、毎日新聞はすべての候補者を紹介している。なぜ中日新聞だけ独自の基準で幸福実現党を外して報道しつづけるのか。

このような報道姿勢では、特定の政党の候補者を意図的に外していると見られても仕方がないのではと尋ねると、「すべての新聞が同じ価値判断だとは思いません。どんな判断にしても、完全に主観を排したものはないと思います。それを主観ととるか、客観的な指標に基づいているととるかは、考え方の違いです」と居直った。

報道基準として、中日新聞は「政治的実績」を示したが、これでは、既存政党や既存の政治家、有名人だけを応援することになり、それ以外のいわゆる「地盤、看板、カバン」を持たずに政治を志す人々を徹底的に無視することになる。特に、地域で高いシェアを占める同紙が報じない候補者は、その地域の有権者にとって「存在しない人」になってしまう。

有権者の「知る権利」「政治選択の自由」を奪っている

中日新聞は、2009年の衆院選、2010年の参院選、2011年の衆院愛知補選、2012年の衆院選、2013年の参院選の過去の国政選挙において、いずれも幸福実現党に対する差別的な報道を続けてきた。こうした偏向報道は、新しい立候補者の「政治参加の自由」を阻み、彼らの「言論・表現の自由」をも奪うことになる。

さらに幸福実現党は、他党にはない独自の政策を掲げている。こうした政策が紹介されないなら、有権者である読者の「知る権利」ならびに、「政治選択の自由」を奪うことになる。

腐敗した権力をチェックして民主主義を守るべきマスコミ自身が、既存政党や世襲政治家を積極的に応援し、それ以外の候補者を排除する。「黙殺権」を行使することで、政治権力におもねっているとしか思えない。

名古屋圏で圧倒的なシェアを誇る東海の雄・中日新聞が主観的な判断で、「公正・公平な報道」をしないことは新聞社としての誇りを捨てているのではないか。

健全な民主主義は、正しい情報が公平に国民に伝わっているという前提があってこそ成り立つ。こうした日本の健全な民主主義を守るためにも、中日新聞は、選挙報道における「公正・公平な報道」をすべきである。

(小林真由美)

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2013年7月14日付本欄【参院選】東海の雄・中日新聞が、幸福実現党の候補者を報じない「差別報道」

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2011年4月19日付本欄 民主主義の危機?~中日新聞が衆院愛知6区補選でまたも偏向報道

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