東海地方を中心とするブロック紙で、名古屋圏では圧倒的なシェアを誇る「中日新聞」が、参院選をめぐる報道で、幸福実現党の候補者を取り上げない差別的な報道を続けている。同紙の山田恭司・選挙調査室長は、本誌の取材に対し、「差別報道はしておりません」と答えるが、「報道しない自由」をふりかざし、国民の「知る権利」を侵す同紙の姿勢は、決して許されるものではない。

中日新聞は、参院選公示日翌日の5日付の愛知県内版で、愛知選挙区の立候補者の第一声を、各人写真入りで5段分の内容を紹介した。ところが、候補者10人のうち、幸福実現党の中根裕美候補と、新人の身玉山宗三郎候補の2人だけを外した(写真参照)。また、同日付の岐阜県版でも、岐阜選挙区の立候補者の第一声の記事で、候補者4人のうち、幸福実現党の加納有輝彦候補のみを外した。

第一声を伝える紙面で、幸福実現党の候補者を外している。

差別的な報道は公示前から始まっており、中日新聞が主催した立候補予定者討論会に、中根候補は呼ばれず、その様子を伝えた6月29日付では、中根氏は存在していない。また、公示後に始まった各候補者の「素顔」や「主張」の連載でも、中根氏は外され続けた。この状況は、岐阜の加納氏についても同じだ。

こうした報道に疑問を抱いた中日新聞の読者の声が、本紙に寄せられたため、本誌は、同紙に電話取材を行った。

まず、なぜ公正・公平な報道をしないのか、という問いに対して、山田室長はこう答えた。

「公平という言葉は難しいですが、同じように報道はしていません。ニュースの価値判断に基づいて、ニュース報道しています。ニュースの価値判断とは何かと言いますと、選挙の場合、一つの基準としては『政党要件』というものをつくっています。しかし、政党要件がすべてではなくて、諸派や無所属の候補者であっても、政治的な実績があるかどうか、元国会議員とか元県議とかそういう方。それと、著名な方、世間的に大変名前が知れている方は、ニュースの価値判断に基づいて、そういう扱いにしております」

政党要件を満たしていることが報道する一つの条件で、それを満たしていない人物でも、政治的実績がある人物や著名人は記事で取り扱うということだ。

だが、政党要件とは、「国会議員5人以上か、または議員1人以上がいる上で、直近の国政選挙で2%以上の得票をした政党」というもので、これは単に、政党助成法が定める政党交付金をもらえる基準。マスコミの報道基準とはまったく無関係。ちなみに、中日新聞は、この要件を満たさない地域政党「減税日本」の候補者を掲載している。

さらに、報道基準として、山田室長は「政治的実績」を示したが、これでは、中日新聞は、既存政党や既存の政治家、有名人だけを応援することになり、それ以外の、地盤、看板、カバンを持たずに政治を志す人々を徹底的に無視することになる。特に、地域で高いシェアを占める同紙が報じない候補者は、その地域の人々たちにとって「存在しない人」になってしまう。「報道の自由」を「報道しない自由」として悪用しているようにしか見えない。

この点についても、疑問をぶつけたところ、山田室長はこう返答した。「(立候補していないように見える点については)そんなことはないという風に考えております。名簿を掲載しています。それは考え方の違いです」ちなみに、山田室長が言う「名簿」とは小さな囲みのもので、これをもって「公正な報道」と主張している。(写真参照)

赤丸で囲んでいる部分が、中日新聞が言う「名簿」。これをもって「公正な報道をしている」と言い張るのは、公正・公平な報道を旨とする新聞社として許されるのか。

紙面全体像

また、「差別報道と感じる読者もいるが?」と質問すると、山田室長は「世の中には、いろんな考えの方がおられますので。うちのニュース報道の基準に基づいて記事をつくっております」と答えた。

中日新聞は、2009年の衆院選、2010年の参院選、2011年の衆院愛知補選、2012年の衆院選の過去の国政選挙においても、いずれも幸福実現党に対する差別的な報道を続けてきた“常習犯"。電話取材で、山田室長は掲載の基準について、最終的に「ニュースの価値判断に基づく」と繰り返したが、やはり、意図的に外していると見られても仕方がないだろう。

しかし、こうした偏向報道は、日本からさまざまな「自由」を失わせる点において危険である。新しい立候補者の「政治参加の自由」を阻み、彼らの「言論・表現の自由」をも奪うことになる。

また、幸福実現党は、「憲法96条をそのままにした形での9条改正」「積極的な原発の推進」「自虐史観(東京裁判史観)の払拭」「いじめをとめなかった学校や教師を罰する規定を盛り込んだ『いじめ禁止法』の制定」など、他党にはない独自の政策を掲げている。こうした主張を取り上げないことは、読者である国民の「知る権利」ならびに、「政治選択の自由」を奪っている。

腐敗した権力をチェックして民主主義を守るべきマスコミ自身が、既存政党や世襲政治家を積極的に応援し、それ以外の候補者を排除する。これは「マスコミの自殺」「民主主義の危機」と言っても過言ではない。

健全な民主主義は、正しい情報が国民に伝わっているという前提があってこそ成り立つ。誰もがこの日本を、情報操作や情報統制が常態化する中国や北朝鮮のような国にはしたくないはずだ。日本の健全な民主主義を守るためにも、中日新聞をはじめとするマスコミ各社は、選挙報道における「公正・公平な報道」をすべきである。(格)

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2012年12月15日本欄 自公300!? マスコミの当落予想は「選挙妨害」だ

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2011年7月号記事 国難をもたらしたマスコミは責任をとれ─中日新聞よ、選挙は公平に報道しなかんがね

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2010年9月号記事 マスコミの偏向報道が政治参加の自由を阻む

http://the-liberty.com/article.php?item_id=822