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インドのモディ首相はこのほどアメリカを訪問し、米印間で東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)がインドに原子力発電所を建設することで合意した。

インドが進める原発輸入

経済成長で電力不足が深刻なインドは、原子力発電を電力供給の中心として、2030年までに6基の原子力発電所を建設する予定だ。

インドでは原子力発電における事故時の賠償責任をメーカーに負わせる法律を施行しているため、商談は停滞していた。しかし、2月には原発事故の補償に関する国際ルールを批准し、一定額を自国が、それ以外は締約国が分担することに変わった。これが、日米からの原発関連企業の進出を促進させることとなった。

インドとアメリカが協力して成長を目指すことは望ましい。日本も含めた日米印で協力関係を強固なものにし、覇権国家を目指す中国に対抗する必要があるためだ。

日本国内では進まぬ再稼動

近年、日本でも原子力発電を海外輸出する動きがある。例えば、2013年5月に安倍首相はトルコのエルドアン首相と原子力発電輸出の協定を結ぶことで合意した。インドとの間でも2015年12月に首脳間で合意している。

一方で、日本国内での原発再稼働はままならない。

日本で稼働している原子力発電所は九州電力の川内原発のみだ。他の原発の再稼働も困難を極めている。16日にも関西電力高浜原子力発電所の運転差し止めの仮処分を出していた大津地方裁判所が、関西電力による効力停止の申し立てを退けた。

新たな原発の建設計画は中止されており、国がプロジェクトとして長年進めてきた発電原子炉のもんじゅは、運営方針すら決まっていない。

原発動かなければ国力低下へ

しかし現在、日本は火力発電に依存しており、エネルギー自給率が低い。石油を中東地域から輸入しているため、石油を運ぶ経路を自由に通行できなくなる事態が起これば、エネルギー危機に陥ってしまう。

また、このまま日本で原発が衰退すれば、日本の技術力の低下にもつながる。新たな技術者が生まれず、今いる技術者は海外へ流出し、国防力の低下にもつながりかねない。

エネルギー問題を抱える日本で原発が動かない中、輸出だけするのもおかしな話だ。国内でこそ、原発稼働を進めるべきではないだろうか。(大)

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