中国が、世界に中国産原子炉の輸出を目指す動きを見せている。

米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、中国の国営企業である中国広核電力(CGN)は23日、ケニア、ロシア、インドネシアなどの企業幹部数十人のほか、外交官やジャーナリストを同社の原子力発電所に招き、国産原子炉「華龍1号」を輸出したいと宣伝した。

国際原子力機関(IAEA)によると、中国国内では現在20数基の原子炉が建設中であり、これは世界で建設中の全原子炉の3分の1以上を占める。中国には、人件費や設備費の安さに加え、国内で培った原発運営の経験をアピールすることで、海外の顧客を誘致する狙いがあるようだ。

世界の原発市場を獲りに行く中国

中国初の国産原子炉「華龍1号」は、すでにパキスタン・カラチでの建設が始まっている。2015年10月には、イギリスが先進国として初めて、英南東部にある原子力発電所に「華龍1号」を導入すると発表し、物議を醸した。他にもタイ、インドネシア、ケニア、南アフリカ、トルコ、カザフスタンなどの市場を開拓している。

中国は過去30年間、フランスのアレバなど世界の原子力大手にとって大きな市場であったが、次は世界の原発の主要な輸出元となる可能性がある。

事前契約や事故対応に不審な点も

しかし、中国初の原発が世界中に建設されることに対しては危険が伴うと言わざるを得ない。

中国製インフラ建設のずさんさとしては、2015年9月のインドネシアの高速鉄道計画が記憶に新しい。日本・中国それぞれが提案した結果、インドネシア政府は財政負担や債務保証を伴わずに事業を実施できる中国案を採用した。

しかし、中国からの提出書類の一部が中国語のままだったり、140キロのうち5キロの計画しか提出されなかったり、地震対策が不十分だったりするなどして、建設認可が下りていない状況だ。

中国国内でもさまざまな事故が起きている。

2011年の中国浙江省温州市の追突脱線事故の時には、脱線落下した先頭車両が破壊された上に、現場に掘った穴に埋められ、「証拠隠滅だ」と批判された。

さらに昨年8月には、天津市の危険化学物質の保管施設が大爆発し160人超が死亡する事故も起きた。当時の市幹部が、施設の運営会社側から金銭を受け取る見返りに営業許可を与えるなどの便宜を図ったことが明らかになっている。

これらの事例に共通するのは、「利益優先で安全性をないがしろにする姿勢」だ。

日本こそ世界一安全な原発を作れる

こうした状況を見ても、中国産の原発が世界中に進出することには不安が伴う。その一方で、日本のメーカーも中国の勢いに負けずに、海外で戦おうとしている。

日本では福島第一原発事故後、国内で新規の原発建設は見込めないため、原発輸出を通じ、海外に活路を見いだしている。インフラ輸出を成長戦略の柱と位置づける安倍政権も、日本企業による原発事業の海外展開を後押ししている。

電力はインフラの中のインフラであり、安く、安定して、安全に供給できる日本の原発技術は世界で必要とされている。福島第一原発事故を経験した日本だからこそ、世界一安全な原発を開発することができるだろう。日本でも原発技術の開発をますます進めることで、世界のインフラ整備に貢献することが必要なのではないか。(真)

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