中国天津市の化学物質倉庫で12日に大爆発事故が起きた。市当局の発表によると、16日時点で112人の死者が出ている。

今回の大爆発は明らかな「人災」

市当局の調査によると、今回爆発した倉庫内には、税関への申告を大きく上回る量の危険薬品が保管されていた。また政府は、危険薬品を扱う倉庫は居住エリアから1キロ以上離れた場所に設置しなければならないと定めているが、それも守られていなかった。

さらに、駆けつけた消防隊員が倉庫内に危険物質があると知らずに放水したことが、連続的な大爆発を招いたという見方が強まっている。今回の大爆発が、ずさんな危険物管理と情報共有不足による「人災」であったことは、間違いないようだ。

当局は情報開示せず情報統制を強化

対策本部は記者会見を断続的に開いているが、「消火や救難に全力を挙げている」とアピールするのみで、原因究明や責任の所在は不明のままだ。

事故の翌日に、現場近くの市民がのどの痛みや目のかゆみを訴えたため、インターネット上には「化学物質が空気中に充満している」「雨は猛毒で、あたれば病気になる」など、さまざまな噂が出回っていた。すると当局から「ネット上で社会を混乱させるデマを流した」として、360件以上が摘発された。

このような情報開示の姿勢に市民の不満は爆発寸前だ。

都合の悪い情報は開示しない中国

中国の情報統制は今回に限ったことではない。今年6月に長江中流域の湖北省で400人余りが死亡した客船の転覆事故では、当局が国営メディア以外の取材を厳しく規制した。

2011年に浙江省温州市で起きた鉄道脱線事故では、原因を究明する前に車両を壊して埋めた上で、新聞などのメディアがこの事故について報じることを禁じた。政府にとって都合の悪い情報を封じ込める体制は相変わらずだ。

中国は「情報公開」で崩壊したソ連と同じ道をたどる

当局が情報統制をするのは、共産党政府への批判を抑えこむためだ。国家主席の習近平は、より強固な一党独裁体制を築き、維持したいと考えている。

中国と同じ共産主義国家であったソ連は、グラスノスチ(情報公開)によって崩壊した。1986年のチェルノブイリ原発事故の際、当時書記官だったゴルバチョフは、自由な情報公開の大切さを感じ、言論、思想、出版、報道の自由化と民主化を実施。するとソ連共産党幹部の豪華な生活ぶりや、汚職が国民に知れ渡り、反共産党感情を引き起こした。これを契機にソ連体制の抜本的な改革が進行し、ソ連自体が解体したのだ。

中国では2000年以降、各地で頻発する暴動や少数民族の独立運動などの鎮静化に充てる「公共安全費」の予算が「国防費」を上回っている。国民の「知る権利」や「言論の自由」を抑圧すればするほど、それを求める声は大きくなり、暴動などに発展しかねない状態だ。共産党の提灯記事ばかりを書くことに嫌気がさし、ジャーナリスト精神に目覚める民間メディアも生まれつつある。14億人の人口を抱える中国が情報統制を徹底することは、もはや不可能ではないか。

国民の「知る権利」を奪う中国共産党への不満は日増しに高まっている。不満が爆発し、中国共産党の独裁体制が崩壊する日も、そう遠くないかもしれない。(真)

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