2015年12月号記事

原発ゼロは安全か!?

「再稼動遅れ」の4大リスク

メディア、原子力規制委員会、学者、司法、反対派の活動家―。

さまざまな分野の専門家が、寄ってたかって「原発のリスク」を検証している。

しかし、物事を冷静に考えるためには、「原発を止めるリスク」も本格的に検証すべきだ。

(編集部 馬場光太郎、小林真由美)


contents


01 経済リスク

町工場の悲鳴

02 火力リスク

火力は死者最多の発電法

写真:読売新聞/アフロ

03 再エネリスク

太陽光パネルも人命に牙をむく

04 安保リスク

タンカーが止まった日

写真:AP/アフロ

「我々の"正義"が法廷を支配していました!」

10月8日、福井市内で開かれた記者会見で、脱原発の活動家たちが訴えた。その日、国内で3番目に動くはずだった高浜原発の、年内再稼動が難しくなったのだ。

事は今年5月に遡る。

福井地方裁判所が、高浜原発の再稼動に「差し止め仮処分」を出した。脱原発の活動家による申し立てを受け入れ形だ。

関西電力は、すぐさま決定の「取り消し」を求めた。その後、福井地裁の審議では「関西電力vs. 脱原発活動家」の議論が続く。

そして10月8日、年内の再稼動がかかった審議が開かれた。しかし結論は「先延ばし」となった。

この福井地裁の判断は、原発再稼動遅れの問題を象徴している。

それは、原発に対して「ゼロリスク」を要求していること。仮処分の決定文には「"万が一"にも深刻な事態が起こらないように」といった条件が書かれていた。

そもそも高浜原発は、震災後にできた「世界で最も厳しい」という安全基準に合格している。そこに司法が「安全と言っても、100%ではないですよね?」と口を挟んできたわけだ。

自動車、飛行機、火力発電―。世の中に、ゼロリスクなものなど存在しない。

逆に問いたい。

「原発停止は、私たちの生活にとってゼロリスクか?」

進まない原発再稼働

「原発再稼動元年」と言われた2015年。しかし、動いたのは、鹿児島県川内原発1、2号機のみとなりそうだ。また、政府は「2030年には日本の電力の20~22%を、原子力によって賄う」と計画している。それでも、震災前の29%に比べれば少ない。

次ページからのポイント

経済リスク 電気代値上げが町工場を倒産に追い込む

死者最多の火力発電・太陽光パネルも牙をむく。タンカーが止まった日シミュレーション