2015年12月号記事
日本をエネルギーで支えたい
次世代原発「もんじゅ」に賭ける男たち
高速増殖炉「もんじゅ」に対して、
廃炉を求める声が出ている。
「計画は非実現的」「予算の無駄」という理由だ。
その「もんじゅ」に、全人生を賭けてきた研究者たちがいる。
彼らは「もんじゅ」の窮地をどう見ているのか。
(編集部 馬場光太郎)
contents
波乱万丈の経緯をたどる、高速増殖炉「もんじゅ」。
「もんじゅ」は燃料を増やしながら発電する
東京から3時間、新幹線と特急電車を乗り継ぎ、福井県の港町・敦賀駅で降りる。そこからバスで1時間揺られ、長いトンネルを抜ける。
うっそうとした山に囲まれた入り江に出ると、大きな施設が目に飛び込んでくる。
高速増殖炉「もんじゅ」。
報道などで、耳にしたこともあるだろう。
"増殖"という名の通り、この原子炉は、燃料であるプルトニウムを"増やし"ながら発電する。半永久的に発電しうる「夢のエネルギー」だ。
通常の原発で燃料となるウランも、いつか埋蔵量が尽きる。紛争で、輸入が止まるリスクもある。
「もんじゅ」が実用化されれば、日本はおろか、世界のエネルギー供給が磐石となる。通常の原発とは、一線を画す技術だ。
しかし「もんじゅ」は、通常の原発以上に、疑問の目を向けられてもいる。何度か事故を起こし、脱原発派からは「科学の暴走」などと批判されてきた。
3・11の後は、「福島第一原発よりも、未完成で危険が多い」と風当たりが強まった。
この「疎まれた原子炉」に、人生を賭けている研究者たちがいる。夢と批判との間で、彼らは何を考えているのか。
記者は、「もんじゅ」の開発に長年携わってきたという堤正弘さん(仮名)を訪ねた。堤さんは「あくまでも個人の見解」と断った上で、「もんじゅ」にかけてきた思いを語ってくれた。
「国のために死んでもいい」
堤さんは10代の頃から、研究者を目指していたという。
「かっこいいな……」というくらいの、単純な理由だった。
世界に誇りたい「もんじゅ」
ナトリウム漏れ事故で14年間の休止
後世、誰かが骨を拾ってくれる