ギリシャ最大の港・ピレウス港(Milan Gonda / Shutterstock.com)

中国政府の国有企業である中国海運最大手の中国遠洋運輸集団(コスコ・グループ)はこのほど、ギリシャ最大の港であるピレウス港を買収する契約について、ギリシャ政府と正式に調印した。

契約は、習近平指導部が指導したという。

港買収は相互利益!?

中国の外交関係者は「今回の買収は中国とギリシャの双方にプラスだ」と話す(9日付産経ニュース)。

同港は、アジアから欧州への玄関口にあたる。中国は、欧州まで経済圏を構築する「新シルクロード(一帯一路)構想」を計画しており、その大きな足がかりになる。

財政危機に悩むギリシャにとっても、港というインフラを切り売りして、外貨が得られる。さらに中国は近年、財政的な支援をちらつかせて擦り寄ってくる。ギリシャとしても仲良くしておきたい国だ。

現地の雇用を奪う?

しかし長期的な目で見て、ギリシャの利益になるかどうかは疑わしい。

港の労働者たちは、中国人が雇用を奪いに来る危機感などから、抗議デモを行ったという。

中国はアフリカにインフラ投資などをする際も、中国人を雇い、中国製資材を使う。現地では雇用も産業も生まれていない。

港の軍事利用も

また、最終的に同港が軍事利用される可能性もある。

例えば、中国がギリシャに多額な財政支援をしたとする。しかし、EU諸国が財政支援に躊躇しているように、ギリシャがそれを返済できる保証はない。

もしギリシャの手元に、返せない多額の借金が残れば、政治的に中国の言いなりになるしかない。そうなれば中国は、港を堂々と軍事利用させるよう要求してくるかもしれない。

中国はアフリカなどでも、経済的な貸しをつくり、政治的圧力をかけている。

アフリカ連合本部や各国の大統領府、大使館や政府高官の住宅建設などを援助した後も、2006年のザンビア大統領選で、「反中国の候補が勝った場合、現地の資源開発を全て取り止める」と脅した。

中国はチベットやウイグルにも、最初はインフラ整備などを口実に入り、軍事侵攻の足がかりにした。

経済関係は軍事関係?

ギリシャも、経済的な協力関係を築いているだけだと思っていたら、気付けば中国の植民地にまっしぐらだった、という可能性もあり得る。

中国の経済進出の危険性を啓蒙しつつ、自由主義圏との経済連携を広げることで繁栄してもらう――。こうしたことも、中国包囲網の一環となるかもしれない。

(馬場光太郎)

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