2016年3月号記事

ヒトは「感動」を買う

プロに聞く―仕事で感動をつくる技

アッと言わせる商品、ジンとくるサービス、ドラマのように団結したプロジェクト―。

自分の仕事に何か足りない……と思っているなら、それは「感動」ではないだろうか。

感動は、一部のスゴイ会社や、天才の特権ではない。はたまた偶然でもない。

心を動かすプロたちに、具体的な感動の技を伝授してもらった。 まずは1つ、お試しあれ。

(編集部 馬場光太郎、小林真由美、冨野勝寛)

今、消費者のニーズは「感動」にある

なぜ今、「感動」が大事なのか。2015年のヒット商品や、読者から集めた心に残るサービス体験を見ると、その理由が見えてくる。

2015年のヒット商品は「感動体験」を提供

紹介した商品は、日経MJ「2015年ヒット商品番付」より。

あの 興奮 がよみがえる

「ラグビーW杯」グッズ(西横綱)

ラグビー日本代表が、優勝候補の南アフリカを破った。その歴史的な逆転劇に、日本中が熱狂した。チームを勝利に導いた五郎丸選手のポーズも注目を集め、ユニフォームなどの関連商品や関連雑誌、国内リーグのチケットなどが飛ぶように売れた。「あの感動」をよみがえらせる商品に、人々はお金を惜しまなかった。

「Number」2015/10/23臨時増刊号

まだ見ぬ日本との 出会い を演出した

「北陸新幹線」(東横綱)

東京―金沢間を2時間半で結び、当初の予想を大幅に上回る人々を運んだ北陸新幹線。北陸は、加賀百万石の栄華が残る、日本有数の観光地だ。にもかかわらず、交通の不便さが人々の足を遠のかせてきた。「行きたかった、あの日本」というJR東日本のコピーが語るように、「まだ見ぬ日本との出会い」のドラマ性が人々を動かした。

SF体験 に120万円

「ペッパー」(西前頭)

周囲の状態を検知し、それに対応して感情を表すソフトバンクのパーソナルロボット「ペッパー」。総費用が3年間で120万円と、必ずしも安くないにもかかわらず、年間計画の4倍の4300台を売り上げた。介護や家事をするわけではない。しかし、「SFじゃない」という宣伝文句が表すように、近未来を実物で体験できる感動が買われた。

日付より "元気付け"

「まいにち、修造!」カレンダー(西前頭)

元テニスプレーヤー・松岡修造氏の明るく、前向きな言葉が書かれた日めくりカレンダー。カレンダーとしては異例の108万部を売り上げた。さまざまな挫折を乗り越えて、日本のテニス界をけん引してきた松岡氏。その説得力のある励ましこそ、先行きの見えない日本経済の中で求められていたのだ。

次ページからのポイント

心に残る感動サービス

インタビュー / 美月あきこ氏, 平野秀典氏, 藤井正隆氏, 高野登氏

歴史をも動かした感動の技