ヨーロッパへ流入する難民の数は、衰える気配がない。ニュースでは、そのほとんどがシリアから逃れてきているかのように見えるが、そうではない。
国際移住機関(IOM)によると、2014年にヨーロッパにたどり着いた難民の数は約28万人。その内、難民の出身国別に見ると、シリア(28%)、エリトリア(12%)、アフガニスタン(7.9%)と続く。シリアとアフガニスタンは内戦状態であり、難民が流出するのは理解できる。
では、2番目に難民の数が多いエリトリアでは、いったい何が起きているのだろうか。
明るい夢が悪夢へと変わっていった
アフリカ東部に位置する人口600万人のエリトリアは、1993年にエチオピアから独立した。当時は国民の誰もが明るい未来が来ることを夢見ていたが、独立から20年が経ち、その夢は悪夢へと変わっていた。
イサイアス・アフェウェルキ大統領は独立以来、一党独裁政冶を敷いている。国会は2002年以来召集されず、1997年に制定された憲法はいまだに履行されていない。独立した司法制度もなく、超法規的な死刑宣告、拷問、マスコミ・教師・宗教の弾圧、無期限の徴兵制度、そして、強制労働などが横行している。
「国境なき記者団」が毎年作成している「世界報道自由ランキング」では、北朝鮮を抑えて、8年連続で最下位。エリトリアは「アフリカの北朝鮮」とも呼ばれている。戦争や内戦が起きていないにもかかわらず、シリアやアフガンに匹敵する数の難民を出しているのは、圧政のためだ。
先進国にかかる圧力
現在、中東や北アフリカの秩序が崩壊し、先進国に大量の難民が流入している。東アジアでも今後、北朝鮮や中国で異変が起きた場合、日本をはじめとする周辺国に難民が押し寄せる可能性がある。また、途上国で人口が急激に増加していることも、この問題に拍車をかけるだろう。
先進国は、難民を受け入れるだけの経済的な余力をつくり出すことも必要だが、そもそも多くの難民が出ないような国際社会を創る努力が欠かせない。日本は長らく「一国平和主義」でやってきたが、自分たちの幸せを追求するだけでなく、世界の困っている人々を幸せにするための外交力や防衛力を持つ必要がある。(中)
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