2015年11月号記事

The Liberty Opinion 5

国際

ヨーロッパへ大量流入する難民

日本は受け入れに協力し大国の使命を果たすべき

トルコの砂浜に打ち上げられた、男児の遺体の写真が世界に衝撃を与えた。男児は2011年以来、内戦が続くシリアからヨーロッパへ逃れる途中だったが、ボートの転覆により、溺死した。

現在、中東やアフリカでの紛争や宗教的迫害などで国を去らざるを得なくなった多数の難民が、地中海などを経由してヨーロッパに押し寄せている。

国際移住機関(IOМ)によると、地中海からヨーロッパに流入した難民・移民数は今年に入って47万人以上(9月18日時点)に上り、すでに年間の難民・移民数として過去最多を記録。 特に問題となっているのがシリア難民で、シリア周辺国では受け入れの限界に達している

難民受け入れで負担が増える欧州

ドイツ・ベルリンで難民申請手続きを待つ難民たち。

シリア難民の多くが向かった先はドイツだ。

ドイツ政府は、今年国内に流入する難民数が年間で過去最高の80万人と予想。ヨーロッパ諸国の中でも受け入れに特に協力的だ

一方で、ドイツ国民の不満の声は高まっている。通常半年ほどにわたる難民審査の間、衣食住は政府や地方自治体により保障される。これでは 国家財政の圧迫につながるなどとして、国内では難民受け入れ反対デモが増加。反移民主義団体が、難民収容施設に放火するなどの事件も増えた

ドイツ南部のミュンヘンには9月12日だけで約1万2千人の難民が押し寄せ、収容能力の限界に達している。そのためドイツは、再び難民の受け入れに制限を設けることを決めた。

もはや、ドイツ一国では受け入れに限界が来ている。欧州連合(EU)は各加盟国に対して、難民の受け入れに協力するように要請している

欧米がまいた紛争の種が難民を生んだ

こうした難民問題を考える上で、 欧米諸国が過去にまいた中東紛争の種が、難民増加につながったことを忘れてはならない

第一次大戦後、イギリスやフランスは、敗戦国であるオスマン帝国領に民族や宗派を無視して国境線を引き、実質的な植民地とした。現在のイラクやシリアなどの国境線はその時の名残であり、「イスラム国」による国境線の引き直し運動にもつながっている。

同時にイギリスはユダヤ人にイスラエルの建国を約束し、パレスチナの地をめぐるユダヤ人とアラブ人の対立も生んだ。

特にシリア難民については、アメリカの責任も大きい。

2013年、シリア政府軍が化学兵器を使って民間人を虐殺している証拠が判明したにもかかわらず、オバマ大統領はシリアへの軍事介入を躊躇。内戦が泥沼化し、多数の犠牲者と難民が生まれた。

欧米諸国が過去の過ちを反省しないままで、難民問題の根本原因である中東紛争を解決することはできないだろう

日本は難民受け入れに協力し大国の使命を果たすべき

このように、難民問題は安全保障問題と密接な関係がある。日本にとっても「対岸の火事」とは言えず、 北朝鮮崩壊などの朝鮮半島有事の際には、日本に多数の難民が押し寄せる可能性が高い 。これ以上、難民という悲劇を生まないためにも、外交面、安全保障面で日本が果たすべき役割は大きい。

また、現在の難民問題にもいつまでも目をつぶっているわけにはいかない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の駐日事務所代表は、日本に難民受け入れの協力を求めているが、具体的な議論は行われていない。 昨年日本で認められた難民申請の数は5000件中わずか11件にすぎない

日本は世界の大国として、「難民受け入れ」という使命を果たす必要があるだろう。

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