英国を訪問中の習近平中国国家主席は21日、キャメロン英首相と会談し、英国での原発の新設に中国企業が参加するなど、経済関係の強化で合意した。

ロイター通信によると、英中両国の企業の間などで結ばれる投資や貿易の規模は総額約400億ポンド(約7.3兆円)になる。イギリス南西部ヒンクリーポイントで進められる原発建設プロジェクトの建設費180億ポンド(約3兆3000億円)のうち、中国側が60億ポンドを出資する予定。来年の審査に合格すれば、欧米では初めての、中国の技術をベースにした原発の建設となる。また、日本と競合する新高速鉄道建設でも、中国企業の参入で合意するものとみられる。

イギリスは、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも西側諸国としていち早く参加を表明した。原発や高速鉄道など国内のインフラの建設に中国の投資を呼び込みたい考えのようだ。

原発推進は国際常識

日本はというと、2011年の震災の後、原発の稼働がゼロになってからその状態が約2年間続いていたが、ようやく今年、鹿児島県の川内原発2基が再稼働した。川内に続いて福井県の高浜原発も稼働を目指しているが、反対する声も大きく、年内の稼働は難しそうだ。

しかし、インドを始めとする世界の新興国では原発の建設計画が数多くあり、全世界の原子力発電所新設の計画は2030年までにおよそ300基ともいわれる。国際的に見ると、低コストで安定した電力を供給できる原発が必要だというのは常識だ。

中国は2016年からの新5カ年計画で、中国国内の原発を年6~8基のペースで新設する方針を固めている。30年までに発電能力や稼働数で日米を上回る世界最大の「原発大国」を目指しているとみられ、原発技術の輸出も加速していくことが予想される。

中国の技術と経済"支援"には注意が必要

しかし、安全対策について懸念の声も少なくない。中国は原発を短期間で倍増させようとしているため、安全管理や技術者の養成が間に合わず、トラブルが発生する可能性は高い。高速鉄道の事故などでも、中国には都合の悪いことをもみ消す体質があることも明らかになっている。イギリスが中国の資金力をあてにして、経済的に依存していくのは危うい傾向だといえる。

日本は2011年の原発事故を経験したからこそ、原発を世界一安全にする対策について他国にアドバイスできる。原発を世界に売り込むべきは、むしろ日本の方だ。中国による経済"支援"の危うさを訴えつつ、日英の経済協力も深めていくことが必要なのではないか。(真)

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