米航空宇宙局(NASA)のラングリー研究センターと米ミシガン大学がこのほど、自己修復することができる素材を開発することに成功したことを、アメリカ化学会に提出した論文で発表した。

数秒で自己修復

素材は、トリブチルボランというジェル状の物質で構成されており、酸素と混ざると急速に固形化する。

NASAが行った実験によると、この素材に対して銃弾を打ち込んだ結果、液体状のジェルが穴の周りに入り込み、酸素が混ざり込むことによって数秒の内に穴が修復した。

将来的には、スペースシャトルを宇宙ゴミの衝突から守るために使用することができるかもしれない。

このジェルを、スペースシャトルの壁の中に入れておけば、宇宙ゴミが衝突して小さな穴が空いたとき、機内の酸素と混ざって穴を塞ぐことができる可能性がある。もちろん、いずれは壁そのものを修復しなくてはならないが、とりあえず酸素が流出するのを止めることはできる。

危険を伴う宇宙開発には、多くのイノベーションが必要

いま、先進国の多くは、火星の有人飛行などに乗り出している。宇宙では、「機体の破損」「酸素の供給と二酸化炭素の排出」「食料の供給」「エネルギー供給」など、人が生存するために検討すべき課題が数多く存在する。地球から遠く離れた場所で、「機体に穴が空いたから酸素が全部なくなりました」では話にならないのだ。

宇宙開発には、まだまだ多くの技術的なイノベーションが欠かせない。中には、軍事や民間の産業にも転用できるものが数多く存在する。

たとえば、今回開発されたジェルは、石油タンカーや航空機を修復するためにも使える可能性がある。石油タンカーなどに穴が空いたら、今は石油が海に流出してしまうだけだが、この穴を自動的に塞ぐことができれば、事故の被害を最小限に食い止めることができる。

日本も最近、JAXAを通じて火星探査や月面探査に乗り出しているが、これらの試みから、新しい産業領域の基となる技術や発明が生まれてくるかもしれない。その点からも、日本は今後、宇宙開発に積極的に取り組んでいく必要がある。(中)

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