今年10月から、12ケタの個別番号(マイナンバー)の交付が始まる。国会提出中のマイナンバー改正法案が、民主党が要求していた修正に応じることで、今国会で成立する可能性が濃厚となった。

マイナンバー法改正案をめぐっては、衆院通過後の5月に年金情報の流出問題が発生し、参議院での審議が見送られていた。だが、政府は今月20日、マイナンバーの基礎年金番号への適用を、半年から1年延期することで調整に入った。2016年1月から適用する予定だったが、年金情報が流出した問題を受け、体制が整うまで延期するという。

「預貯金口座へのマイナンバー適用」で国民の財産を把握

だが、今回の改正法案で注目すべきは、預貯金口座へのマイナンバー適用が盛り込まれている点だ。政府はマイナンバーを通じて、国民の収入や納税情報などのフローの情報だけでなく、預貯金というストックの情報もつかむことができるようになる。2018年から適用する予定で、初めは任意だが、義務化も検討中だという。

ここには、国民一人ひとりの財産を正確につかみたいという政府の思惑がある。しかし、預貯金口座にマイナンバーが適用されるとどうなるか。例えば、特定のモノやサービスを購入する際に、金融機関などにお金を振り込んだ場合、何を買ったか、その人がどういうことに興味があるのか、趣味や嗜好まですべて丸裸にされてしまう。

このようにマイナンバー制の裏には、国民、特に富裕層から所得税や贈与税、相続税などの税金を取ろうとする財務省の意図が見え隠れしている。

「私有財産は、最も重要な自由の保障である」

ノーベル経済学賞を受賞した経済学者フリードリヒ・ハイエクは『隷属への道』の中で、お金は最も広い選択の幅を与えてくれる自由の元であるため、「私有財産制は、財産を所有するものだけでなく、それを持たぬ者にとっても、最も重要な自由の保障である」と指摘している。

ハイエクの指摘通り、マイナンバーで一網打尽に国民の私有財産の情報をつかむ社会は、ある種の「監視社会」と言える。さらに人の通帳の中身を見ることは、最大のプライバシーの侵害だろう。このままでは、富裕層は日本からどんどん逃げ出していってしまう。

ほとんどの国民が詳しいことを知らないうちに、預貯金口座へのマイナンバー適用という重要法案を通そうとするやり方は姑息だ。国民は、自身の財産を丸見えにする改正案、そしてマイナンバー制度そのものに「No!」の声を上げるべきだ。(泉)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『ハイエク「新・隷属への道」』 大川隆法著

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