《本記事のポイント》

  • 赤字国債は一度きりとして発行されたが、その後やみつきになった
  • ケインズ政策を続けると腐敗の温床となり、GDPも下がる
  • 労役の代わりに、重税で国民を奴隷化するケインズ政策

黒田東彦日銀総裁は17日の記者会見で、アベノミクスは大きな「成果を上げた」と語ったが、「負の遺産」は見逃せない。それは政府債務の拡大である。

第一次と第二次補正予算を反映した2020年度末の国と地方を合わせた政府債務は、1182兆円に上る。来年には1200兆円を超える見込みである。

菅政権は、この「負の遺産」とどう向き合うべきか。

この問題を考える時に、赤字国債発行のいきさつから振り返っておきたい。

日本で初めて赤字国債が発行されたのは、日本経済が「昭和40年不況」に陥った1965年である。

当時は、極めてケインズ的な不況分析が行われた。不況になっているのは、民間の消費や投資が低下しているからであり、総需要を増やせばそれを打開できる、というものだ。そのためには政府支出を増やせばいいとされ、赤字国債が発行された。

だがそれは、あくまでも一度限りの措置とされていた。金額は2千数百億円程度で、「7年で必ず耳をそろえて返します」と大蔵大臣は発言していたという。

しかし残念ながら、赤字国債の発行は一度限りとならず、悪しき前例となってしまう。

1960年代前半までは、民間の設備投資が主導する高度成長が実現したが、60年代後半から70年代前半にかけては、政府支出のシェアが急増する。地域間格差の是正のために、全国で建設業を中心とした雇用を増やすべく、公共事業が拡大した。収益性の低い事業への投資は、事実上の失業手当となってしまった。

しかもそれは、自民党の長期政権を支える基本政策となっていく。要するに、左右抱き込み型の政策で、共産党と見紛うような政策を実行し、「左」の票を取り込んできたのである。

ケインズ政策で大恐慌から抜け出せなかった

コロナ不況にある現在の日本でも、「ケインズ政策」を実行すべきだという考えが、空気のように当たり前になっている。理由は、1930年代の大恐慌下のアメリカでは、大規模公共事業「ニューディール政策」が取り入れられ、ケインズ政策という外科手術が行われたからこそ経済は復活できたという、もっともらしい幻想が流布しているからだ。

だが、このケインズ政策に不況を撃退する魔法のような力などなかったのが真実だ。

ニューディールが行われていたにもかかわらず、37年から38年にかけての失業率は20%以上を記録。ルーズベルト政権の財務大臣ヘンリー・モーゲンソー氏も次のように嘆いた。

「かつてないほど大規模な財政出動で政府支出を増やしてきましたが、まったく効果がありませんでした。私はこの国の繁栄をもう一度見たいのです。人々が職についているのを見たいのです。十分な食事が食卓にあることを見たいのです。でもルーズベルト政権発足後、失業率は当初と変わりません。政府債務が膨大になっただけなのです」

絶望的な響きである。不況時には、民間の消費と投資が落ち込み、不況が深刻になるため、公共投資を増やせば、総需要が増え、失業率が下がる──。そうしたケインズ政策に基づいたニューディールが行われたにもかかわらず、失業率は高止まりを続けたのだ。

そもそもニューディールは、一般に思われているような理想的なものではなかった。例えば、ニューディーラーらがネブラスカ州に建てたドリームシティは、誰も住みたがらない「夢の町」、要するにゴーストタウンとなった。再選を目指す政治家にとって、税金をばら撒く意味があっただけである。

ケインズ政策を続けると腐敗の温床となり、GDPも下がる

コロナ不況下にある日本では、今後も政府支出による「景気刺激策」が行われるかもしれないが、それは実際には景気を"刺激"しないだろう。アメリカの経済学者でトランプ氏の経済顧問でもあるラッファー博士が本誌連載で説明しているように、政府から所得を奪われた人たちのことを考慮できていないため、経済的な効果はゼロで、GDP(国内総生産)の総量が増えないためだ。

それはラッファー博士が、博士号を取得していた時の発見にまで遡る。博士は、政府支出を10ドル増やすと、1期目は10ドル分のGDPが増えるが、続く3期でGDPは支出を増やす前の数値に戻ってしまうという、反ケインズ的な統計結果を発見した。

さらに失業手当や社会保障のために支出すると、GDPは下がるという統計結果も発見。要するに政府支出は、経済成長を阻害してしまうのだ。

それはそうだろう。働いている人から税金を奪って、働いていない人にばら撒けば、働く人のやる気を失わせ、福祉に依存する人を増やしてしまう。

ちなみにラッファー博士は、日本の政府支出の増大とGDP成長率の低下に相関関係があったと指摘している。

しかもラッファー博士は、民間より政府がお金を使う方が、1.35倍効率が悪いという。個人事業主らに国が支給する持続化給付金事業で、実は、膨大な委託費が電通に中抜きされていたという実態を踏まえると、非効率さを示す1.35という数字は、低く見積もられているかもしれない。いずれにせよ、政府がばら撒くと、特定の事業者との癒着や、政府資金の獲得競争など、結局は期待通りの結果を必ずしも生まないのは確かである。

そして極めつけは、「支出は増税になって跳ね返ってくる」ということだ。それは東日本大震災後の「復興税」のように、国民は経験済みのことである。

ケインズは労役の代わりに、重税で国民を奴隷化する

大川隆法・幸福の科学総裁の霊査により、ケインズの過去世は、秦の始皇帝であることが徐々に明らかになってきている。以下は、大川総裁が2010年4月に収録したハイエクの霊言の抜粋である。

ケインズの過去世は秦の始皇帝なんです。それから、その前の過去世は、エジプトのピラミッド造りとかかわっています。そして、ひどい重労働を課したんですね。

ケインズ経済学の本質は、ここにあるんです。結局、その背景にあるのは、巨大な国家と奴隷化する国民の姿です。これが、ケインズ経済学の背景にあるものです。

そうしたものの建設は、王様の立場から見れば、偉大な王様、歴史に遺る王様になれることであるし、文明として見れば、偉大な文明として記憶されることにはなるけれども、人民の立場から見れば、そうとうの圧政を生むことも多い。

こういうことが彼の発想の裏にはあるわけです。だから、彼をジャーナリストなどと甘く見てはいけないんです。帝王です。彼は、もともと、帝王になる素質を持っている人なんです。

ただ、彼の考え方でいくと、結局、『大きな政府』が必ず出来上がって、人々が圧政から逃れるための努力をしなくてはならず、気をつけないと、政府の言うことをきかない者は、粛清されたり、国外脱出をしたりするようなことが起きるわけですね。

あなたがたは、今、そういう労役をしてはいないかもしれないけれども、その代わり、重税を背負わなくてはいけないわけです。『重税を背負って、サラリーマン業を延々とやらされることになる』ということですね。

考え方を改めず、"ケインズの亡霊"に支配された、七十前後の政治家たちに政治をやらせると、これから先の未来においては、そういうことになるわけですね 」(『未来創造の経済学』)

1981年に、質素倹約で「メザシの土光さん」として知られた土光敏夫氏が、「増税なき財政健全化」を進めた時の政府の借金の総額は100兆円程度だった。今は当時の12倍に達しようとしている。

政治家は、将来の国債の暴落を防ぐためにも、アメリカの経済学者ミルトン・フリードマン氏の「Government Spending Is Taxation(政府支出は課税である)」という言葉を、心に深く刻むべきだろう。一方で、国民は増税に対する抵抗運動が必要だ。そうでなくては、ピラミッドや万里の長城を建設する苦役を強いられたごとく、国民は総奴隷化されてしまう。

(長華子)

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『未来創造の経済学』

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