画像は、360b/Shutterstock.com

《本記事のポイント》

  • 改革開放を祝う習氏の演説は中身がなく、政治色を強めて国の団結を促すだけだった
  • 演説の裏で、中国は大豆を大量購入し、米中首脳会談の合意を履行中
  • 習氏は、外憂のトランプ政権、内憂の豚コレラと戦っている

中国で市場経済を取り入れた「改革開放政策」から40年を迎えた18日、習近平国家主席は演説を行い、「中国の特色ある社会主義事業を飛躍させた」として政策を維持する考えを示した。主な演説のポイントは以下の通り。

「21世紀におけるマルクス主義、現代中国のマルクス主義を発展させることは現代の中国共産党員にとって、しかるべき歴史的責任である」⇒マルクス主義を堅持する

「共産党中央委員会の権威ある集中的なリーダーシップをわれわれは断固として支持し、党の指導を確実に実施するとともに、改革と発展、安定、内政および外政、国防、党、国家、軍などの分野に反映させる」⇒共産党体制を強力に肯定

「中国は世界という舞台の中心に近づいており、国際社会により世界平和を築き上げる国、世界の発展に貢献する国、国際秩序を守る国として認識されている」「中国の発展はいかなる国の脅威にもならず、永遠に覇権を唱えない」⇒平和的な台頭をアピールし、アメリカをけん制した

「中国は国家主権と領土を守ることにおいて、揺るぎない政治的決意と強大な能力を持っている。祖国の神聖なる領土は寸分の分裂も許されてはならない」⇒香港、台湾、南シナ海などの領土問題で妥協しない

習氏の演説は、具体的な政策がなかった

習近平氏は、1時間20分に及ぶ演説でさまざまな点に触れたが、目新しい内容はなかった。

産業政策「中国製造2025」の見直しや通商政策の変更、景気刺激策に触れるという期待もあったが、それも空振りに終わった。市場の関心は、今週に開かれる来年の経済政策運営の方針を決める「中央経済工作会議」で何が打ち出されるかに移っている。

また、改革開放を祝う式典では、電子商取引最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)のジャック・マー会長や、米プロバスケットボール(NBA)元スター選手の姚明氏ら110人を表彰し、中国共産党への忠誠を誓えば、成功者になれることもアピールした。

改革開放の成果を強調した習近平氏であるが、現状では、トランプ米政権の「貿易戦争」への具体的な対抗策を持っておらず、そうした政治色の強い演説や表彰によって、国民の団結を促す他なかったと言える。

演説の裏で、中国は大豆を大量購入

一方、式典が行われた同じ日の18日、中国の輸入業者は、米中首脳会談で合意したアメリカ産の大豆を購入し、貿易赤字の削減を進めていた。会談以降では、中国勢の大豆購入は2回目。前回の購入量は150万トン超で、5億ドル(約570億円)超に相当するとみられる。

中国は、大豆の自給率が1割台にとどまる「輸入大国」である。自給率が低いにもかかわらず、アメリカ産の大豆に25%の関税をかけた。これは、大豆を飼料とする豚肉や鶏肉の価格に跳ね返り、消費者の財布を直撃し、国民の政情不安につながりかねない。

食料価格は、中国共産党が敏感に反応する問題である。実は、中国が成立した背景には、ハイパーインフレがあった。また天安門事件も、豚肉などが高騰したことが要因の一つとも言われている。

経済問題の不満は、政治問題へ矛先が向けられてきた歴史がある。習近平氏は、政情不安につながりかねない、報復制裁に出るという振り上げた拳の行き場に困っている。

外憂のトランプ政権、内憂の豚コレラ

さらに中国政府が頭を悩ませているのは、家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」が国内で猛威を振るっていることだ。すでに20省に感染が広がり、60万頭以上を殺処分するなどして食い止めようとしている。

中国人の暮らしを直撃する貿易戦争を戦うなかで、豚コレラが広がっている状況は、習近平氏にとって、まさに「天罰」に映るだろう。中国共産党は、外憂としてのトランプ政権、内憂としての豚コレラと戦っている。

習近平氏は、今回の演説で威勢のいい姿を見せた。しかし、結局はアメリカと妥協せざるを得ないだろう。

(山本慧)

【関連記事】

2018年12月5日付本欄 米中首脳会談は「休戦」ではない 南シナ海問題や宗教弾圧の提起で"追加制裁"

https://the-liberty.com/article/15176/

2018年12月16日付本欄 バチカンが譲り「中国公認の司教」に一本化 中国は地下教会への弾圧を強める

https://the-liberty.com/article/15231/