2019年1月号記事

2019年

消費税10%で

年90万円損する

まだ増税は止められる!

「もう決まったことだから……」

そんな雰囲気が漂う10%への消費増税だが、実際は首相の判断一つで止められる。

最後にもう一度、「札束の重み」で考えてみたい。微量でもじわじわ経済に回り、

確実に衰弱させる"猛毒"の恐ろしさを。

(編集部 馬場光太郎、長華子、小川佳世子)


contents


Japan

「たかが3%」―。

2014年に消費税率が8%に上がる前、多くの国民はそう考えただろう。「100円の商品なら、たかだか3円分でしょ?」と。しかし蓋を開けると、まったく違う現実がそこにあった。

「増税から3年で、日本の家庭は年34万円も買い物を減らしています」 (*1)

『「10%消費税」が日本経済を破壊する』の著作を持つ藤井聡・京都大学大学院教授はこう語る。34万円は、増税前の一世帯当たりの消費の9%に相当。1カ月分の給料が減るレベルだ。

私たちの財布に、いったい何が起きたのか。

(*1)藤井氏による計算。総務省統計「一世帯一カ月間の支出(二人以上の世帯)」の各年1月の支出総額を、物価変動を差し引いた実質値にし、12カ月分の消費に調整した。

「もう一品」我慢の破壊力

熊本県で地元農産物を加工・販売するAさんは、増税後のことをこう振り返る。

「目当ての商品を見つけた後、『他にどんな商品があるか』って覗くお客様が減りました」

経営者は消費者の半ば無意識の変化を、店頭で観察し、売上額で感じとっている。

「お歳暮やお中元も、最低限にしようという方が増えて、通販も3~4割減りました。田舎にはつらくて」(Aさん)

地方で薬局チェーンを経営するBさんも次のように語る。

「同じ芳香剤でも、少しリッチな香りで気分を上げてくれるようなものがあるじゃないですか。そういう付加価値の高い商品に、お客様が途端に手を伸ばさなくなったんです。商品によっては、販売数が10%も減りました」

税率が3%上がったから、3%分だけ買い物を減らすわけではない。もっと漠然とした心理的な冷え込みで、人々は「もう一品」を我慢する。それが積み重なり企業には大打撃となった。

Bさんはこう続ける。

「買い物って、『気分』なんです。パッケージとかポップのちょっとした言葉で、売り上げが大きく変わるのを、私たちは日々実感しています。

まだ景気が悪い中で消費税を上げたから、お客様は『高いな』『主人の給料もどうなるのか』という漠然とした不安が湧いた。財布の紐を締めるに決まっています。政府には人の気持ち、もう少し分かってほしかったな」

理屈を超えた不安や「節約気分」が全国を駆け巡る。そうして、税率が上がった3%分をはるかに上回る消費が減ったのだ。

次ページからのポイント

賃金は「21万円」減った

Interview 増税不況が「福祉のため」ですか? / 藤井 聡氏

Interview 日本の消費が冷えれば、中国が温まる / 田村 秀男氏