中国では至る所に監視カメラが設置されている。

《本記事のポイント》

  • 中国の監視カメラの映像から、映画がつくられた
  • 監視カメラやネット検閲など、中国では監視が日常的に行われている
  • 監視社会に近づきつつある日本は、反面教師としたい

中国で、興味深い映画が製作された。それは、監視カメラの映像でつくられた映画「Dragonfly Eyes」だ。

それは、酪農場で働く若い女性と、農場の監視システムの技術者で彼女を監視していた男性の、不運なラブストーリー。

中国で最も有名な芸術家、シュー・ビン(Xu Bing)氏らが、中国のインターネットセキュリティ会社などのウェブサイトから、監視カメラの映像をダウンロードし、7000時間の映像の中から選り分けて、約80分の映画をつくったという。

シュー氏は、「この作品は未来の芸術の表現法をも予言している」とコメントしており、「全く新しい現代アートの作品を創りたい」という思いから、この作品をつくったようだ。

シュー氏は、11日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に対し、「世界全体は、巨大な映画スタジオになっている。(中略)過去は、政府の監視だったが、今やその範囲は、政府からあらゆる人に広がっている」と答えている。

あらゆる場所に監視カメラがある

シュー氏が語るように、中国の監視カメラの設置数は世界でもトップクラス。2010年以降、カメラの設置数は年間20%のペースで増加しており、中国全体には約8000万台のカメラがあるといわれている。

監視カメラがあるのは、道路や駅など公共の場所だけではない。食堂やレストラン、学校の中、ヨガや水泳のレッスン、フェイスエステ中の様子など、極めてプライベートな映像まで撮影されている。

中国では官民問わず、治安維持や犯罪防止のために、あらゆる場所に監視カメラを設置しており、国民もそれを受け入れている状況だ。

ネット監視は当たり前、大企業の個人データにまで

その監視体制を取り仕切っているのは、やはり、中国政府である。中国国家インターネット情報弁公室は11日、ネットサービス大手3社に対し、国家の安全を脅かす情報を流す利用者がいるとして、一斉調査に乗り出した。こうした調査は、極めて異例だ。

この3社は、中国版LINEや中国版ツイッター、有力ネット掲示板のサービスを管理しており、この3サービスが中国のネット世論を形成している。そのため、3万人以上のインターネットポリスがサービス内のメッセージを検閲し、中国政府に不都合な批判を行う利用者のアカウントを数多く閉鎖している可能性が高いと見られる(12日付日経新聞)。

こうしたネット検閲にとどまらず、中国政府は、大手IT企業アリババなどの民間データベースにまで触手を伸ばし、あらゆるデータを国民の監視や統制に活用しようとしている。

日本を中国のような監視大国にしてはならない

こうした監視体制は、日本にとっても他人事ではない。普段生活していると、監視されているという実感はわきづらいが、日本にも監視カメラが300万台以上あり、知らないところで監視されている。

また国民を12ケタの番号で管理するマイナンバーが導入され、家族構成や職歴、収入、資産や預貯金、通院歴まであらゆる個人情報が紐付けされる。これは、国家機関が自由に個人情報にアクセスできるようになることを意味する。

中国のような監視大国に住みたいという日本人は、ほとんどいないだろう。治安や安全も大切だが、政府が国民への監視を強めないよう、声を上げていかなくてはならない。

(山本泉)

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