【201X年 日本再占領!?】(2)沖縄に中国軍が駐屯する
2010.10.01
2010年11月号記事
中国軍事専門家 平松茂雄インタビュー
- 【201X年 日本再占領!?】(1)イントロダクション
- 【201X年 日本再占領!?】(2)沖縄に中国軍が駐屯する
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平松茂雄(ひらまつ・しげお)1936年生まれ。慶應大学大学院修了後、防衛庁防衛研究所勤務。同研究所室長、杏林大学教授を歴任。専門は現代中国の軍事・外交。主な著書に、『日本は中国の属国になる』(海竜社)、『「中国の戦争」に日本は巻き込まれる』(徳間書店)がある。 |
──9月の尖閣事件は、「中国の海」になりつつある東シナ海では驚くほどのことではない?
この海域には事件前から、中国の漁船がかなりの数、うろうろしていたようです。
ある沖縄の漁民は「近くに行ったら、中国の漁船がいっぱいいて、おっかなくて逃げてきた」と言ってました。
今回、漁船が日本の領海に入ったため、海上保安庁の船が警告を与えているうちに、向こうから接近してぶつかってきた。でも何回も警告して漁船が出ていかなければ、逆に海保の船が実力行使して、ぶつかって追い出してもいい。
5月にも、奄美大島沖の日本のEEZ内で、中国船が、海保の測量船に「ここは中国の水域だからやめろ」と言い、測量を止めさせ、追い出す"事件"が起きました。今まで中国は「中国の海だ」と言いながらも、日本側の言い分を一応は認めて留保していましたが、今度は本格的に態度で示し始めているわけです。これはものすごく重要な変化です。
ここで日本はがんばらなきゃ駄目。要するに、「根比べ」です。日本と中国が根比べするところにまで、この海域がなったわけです。
米軍が出て行けば中国軍が出てくる
──東シナ海はほとんど「中国の海」になりました。
中国は去年、建国60周年を迎えましたが、ほぼ10年おきに支配地域を拡大してきた歴史があります。70年代に南シナ海の西沙諸島、80年代に同じく南沙諸島、90年代に東シナ海という具合に進出し、2000年には西太平洋に出てきています。
これらの動きの中で、表向きは資源調査のものもあるけど、実際は軍事目的。潜水艦の通り道として海底の構造などを全部調査している。今年4月には宮古海峡を堂々と中国の軍艦や潜水艦が通過して、西太平洋で大演習をやった。これからも実施するでしょう。
中国が最初に周辺海域に出てきたのは74年の西沙諸島で、ここにいた南ベトナム軍を排除して、実効支配しました。
実はこの中国の動きの裏には、72年のニクソン米大統領の電撃訪中があります。この米国の中国接近の理由は「ベトナム戦争をやめたい」ということ。訪中後、米国はベトナムから撤退し、参加していた軍事同盟「東南アジア条約機構(SEATO、注)」からも手を引きましたが、その後に起こったのが中国による西沙諸島の実効支配です。
──米軍が退くのと中国軍が出て来るのは一体。
72年の沖縄返還も、米国が中国と友好関係を結ぶため北京に行く際の最大のお土産。基地は残したけど、少なくともベトナム関係の部隊は全部沖縄から引き上げました。
米国は、東南アジアの国々にも日本にも軍事力を持つことを認めませんでしたが、ある日突然、「中国と仲良くするから、もう出て行くよ」「自分たちで自助努力しろ」と去っていった。
でも、米国は自分たちが抜けたところに中国が出てくることをある程度期待して引き上げている。ソ連よりはマシだと。まさか中国がこんなに国力を増すとは思っていなかったのでしょう。
沖縄についても、米国は日本の自助努力と肩代わりを期待したが、沖縄返還後、日本は何もしなかった。だから今、東シナ海が中国に脅かされているのです。
(注)1954年に、東南アジアでの共産主義拡大を防ぐためにつくられた。米国のほか、イギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、タイの8カ国で構成。毎年、軍事演習が行われた。ベトナム戦争後の77年に解散。
米国は中国と話をつけ、退く
4月、潜水艦2隻を含む10隻の中国艦隊が、堂々と沖縄本島と宮古島の間の公海を南下した。(Photo: 防衛省提供)
──中国が「東シナ海はオレたちの海だ」と行動していますが、次はどこにきますか。
2010年代の目標は「台湾統一」です。これには米国が軍事介入するでしょう。そこで中国は、横須賀やグアムから出港する米国の空母や原子力潜水艦が、西太平洋の海域に入ってこれないようにする必要があります。これからその海域には中国の潜水艦がウヨウヨすることになります。
でも中国は、実際に戦って台湾を破壊しようとは思っていないはずです。できるだけ穏便にすませたい。それには軍事的な圧力で、「周辺海域を抑えた」「米国はもう出てこない」という証拠を突きつければいい。そして"平和的"に解決するために交渉のテーブルにつかせる。今、「台湾統一」は最後の段階に来ています。
──沖縄・尖閣はどうなりますか。
中国が、沖縄本島から宮古海域とバシー海峡を抑えて、軍艦が自由に動けるようになると、何もしなくたって沖縄は取れます。沖縄県民の多くが「米軍は沖縄から出て行け」と言ってるから、今の状態が続けば米国は日本より、中国と話をつけたほうがいいと考える。そして米国は退く。
現在の米国なら台湾を見捨てずに中国と戦うと思います。問題は、日本はどうするかということ。当然、米国と一緒に台湾を守らなきゃいけない。攻撃はできなくても、敵を見つけて、排除することはできます。
でも中国が、「台湾は中国の領土だ。内政干渉するのか」と迫ってきたら、今の日本の民主党政権ならパニックに陥る。
──その時点で米国は日本と一緒に戦う気がなくなる。
そう思います。米国は中国と話をして、沖縄から退いていくでしょう。その後に中国が入ってくる。
そうなるまでには、いくつかの段階があるでしょうが、例えば「軍事交流」を名目に、中国の軍艦が沖縄に入港する。日本政府も「それならどうぞ」という形で、中国側はだんだん港の出入りも、日本での移動も自由にできるようになり、寄港できる地域も横須賀などに広がって、いつの間にか中国軍が駐屯している。そんな未来が迫っています。
そのときには、すでに周辺海域には中国の船がウジャウジャいて、シーレーンも抑えられ、日本には食糧や資源も入ってこなくなる。そうすれば、中国は簡単に沖縄を獲得することができます。
──海については、すでに日本は「占領前夜」「属国化前夜」と言っていいですね。
そうです。中国が、着実に10年間隔で勢力を拡大してきたのは、良くも悪くも明確な国家戦略を持っていたから。戦略と言うと難しく感じるけど、要するに、世の中で起きていることをどう分析して、自分の振る舞いに結びつけるか。日本も少なくとも国家レベルでは明確な戦略を持ってもらわなければ困ります。
日本は「核開発」を宣言して米国の核の傘を機能させろ
──占領への流れを引っ繰り返すために何が必要ですか。
もう遅いんじゃないの? 今の自衛隊では何の役にも立ちません。日本は自分の国を守る術がないので、中国に核兵器で脅されたら両手を上げて降参するしかない。
でも何かやるとすれば、中国大陸と朝鮮半島を射程に収めた核兵器をつくると宣言すればいい。中国や北朝鮮に対して「核開発します」と言う。本当に核を持ってもいいんだけど、おそらく米国は認めないから、「それなら、しっかりと日本を守ってくれ」と日米同盟の強化を米国に迫る。
──米国の「核の傘」を機能させることが、最も現実的な対応。
そりゃそうですよ。一番安上がり。当然、米国には沖縄に居続けてもらわなきゃ駄目です。沖縄と台湾でがんばって、中国を西太平洋に出さないように通せんぼすることが必要。ここで日本が根比べしないと、将来間違いなく、中国に占領されてしまいます。
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