2020年世界は日本を仰ぎ見る Part3

2011.12.25

2012年2月号記事

特集「心の力」で未来は変わる第2部

特集「心の力」で未来は変わる第2部

【6】資源・エネルギー危機 日本の技術が世界を救う

2011年に起きた最も無意味な危機は電力危機だろう。

東日本大震災に伴う福島第一原発の事故で、感情的な原発バッシングが日本を覆った結果、被災地と関係のない原発も次々と操業を停止し、電力供給に不安が生じた。

日本にある54基の原発のうち、12月12日現在、稼動しているのはわずか8基だ。

しかし、今回の原発事故による死亡者はゼロ。34人も亡くなったチェルノブイリとはまったく違う。いわんや10万の単位で死者を出した広島・長崎の原爆とは、比較の対象にはならない。明らかに「万犬虚に吠える」状態の過剰反応だ。実際、年末になって、原発の危機を煽る報道は鎮まりつつある。そもそもネタが尽きてきつつあるからだ。

原発事故で日本の原発技術が進化する?

現実問題として、原発に代わる電力供給体制はすぐには組めない。

太陽光発電は、コストが高すぎる。原発1基分の電力を生み出すのに、山手線の内側をすべてソーラーパネルで埋め尽くさなくてはならないのだから論外だ。

石油への依存を高めるのは、安全保障上の問題が生じる。中国が東シナ海や南シナ海へ侵出しようとする中で、中東からの資源の輸入に頼るのは危険だ。

最も着実でコストが安い方法は、原発の安全性を高め、津波対策として、原発の周囲の堤防を高くすることだ。実際、被災地のど真ん中にある宮城県の女川原発は津波の被害をまぬがれている。

従って、空騒ぎが終わってみれば、原発維持に戻り、日本の原発技術がかえって進化する可能性がある。

現に民主党政権は、国内の原発を停止させる一方で、原発の輸出を進めようとしている。原発の新設を進める米国、中国、インド、ベトナム、トルコなどで、実は日本の原発が引っ張りだこなのだ。 だから、政府も本音では、原発の有効性を認めているのだ。

日本の新技術で人口100億時代に対応する

また、電力危機は、一種のオイルショック効果を発揮して、省エネ化をさらに進めることになるだろう。

日本の省エネ技術は、オイルショック以降、本格的に進化した。今では、日本のGDP(国内総生産)あたりの1次エネルギー供給量は、EUやアメリカの2分の1、中国の8分の1、ロシアの17分の1だ。世界平均と比べても3分の1だから、 世界中が日本の技術を使えば、世界のエネルギーは今の3分の1で済むことになる。

日本の省エネ・環境技術は、すでにダントツで世界一なのだが、震災を機に、さらに進化する可能性があるのだ。

もちろん、次世代のエネルギー開発、新たな資源開発にも活発になっていくだろう。

とりわけ海底資源の開発には大きな期待が持てる。

日本の排他的経済水域(EEZ)には、国内の天然ガス消費量94年分のメタンがあると言われ、海底熱水鉱床には半導体や燃料電池に不可欠なレアメタルが眠っている。尖閣諸島付近の海底油田には、イラクに匹敵するとも言われる石油があるという。

日本は領土が狭いというイメージがあるが、海の広さでは実は世界6位であり、ここに眠る資源を活用できれば、一気に資源大国に駆け上がることも可能だ。 そうすれば、日本は資源を輸入しなければやっていけないという弱点を克服することができる。

1970年代に公害問題と石油問題を克服したように、原発事故と電力危機をテコに、新技術を開発・実用化する可能性は極めて高い。

その結果、世界の人口が100億に近づいて、資源・エネルギー不足が懸念される中、日本の技術は、世界を救うことになるだろう。

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タグ: 技術  考え方  資源  繁栄  経済大国  2012年2月号記事  電力危機  日下公人  先進国  エネルギー 

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