バイデン政権の経済運営についての支持率は壊滅気味 それでも「上手くいっている」とバイデン氏は豪語

2023.06.25

《本記事のポイント》

  • インフレ率の低下はバイデン政権の手柄ではない
  • 「手取りが増えた」も不正確
  • 「インフレ税」で国民から富を奪い、公約を破った

バイデン政権の経済運営に対する支持率は、かつてないほど低下している。

デモクラシー・インスティテュートの最新の世論調査によると、経済に関する支持率は26%まで低下した。

それにもかかわらず、バイデン政権は、経済面で成果を上げていると事実をすり替えているので、その問題を紹介したい。

インフレ率の低下はバイデン政権の手柄ではない

まず、インフレ率だ。

5月のインフレ率は年率4%まで下がった。これを受けてホワイトハウスは、「インフレ率は半分以下に低下した」「これで家計にゆとりが生まれる」とツイートし、バイデン氏の計画がうまくいっている証拠だと訴えた。

実際は、どうだったのか。

そもそもバイデン政権発足時のインフレ率は1.4%と低かったが、その後、消費者物価指数は15.6%上昇している。とくにエネルギーの物価は31.2%、生鮮食料品の物価は19.7%と上昇率が高い。

しかしバイデン政権は、インフレ率を下げるために何ら手を打ってこなかった。むしろロシア-ウクライナ戦争の前にインフレ上昇が顕著だった時も、政権側は、インフレは「一時的なものだ」と否定しており、昨年8月にも、「インフレ抑制法」という大規模な政府支出を伴う法案を成立させて、インフレを加速させてきた。

一方、インフレ率が下がったのは、米連邦制度準備理事会(FRB)が過去15カ月連続で金利を引き上げてきたからである。

バイデン氏が大統領に就任した際に、ゼロに近かった金利は、現在5%から5.25%に引き上げられている。

もっともこの利上げで、国債価格が下落し(金利は上昇)、金融機関が3行も破綻。今後も、オフィス需要の低下から、商業用不動産に貸し付けを行っているケースが多い地方銀行などを中心に、186行が破綻するという説も根強くある。

こうした中、アメリカの中小企業の景況感を調査した経済指標である米中小企業楽観視数は4月、10年ぶりの低水準となっている。

結果として、インフレ率は昨年6月の9.1%から大幅に低下した。だが、FRBの目標とする2%まで下がっていない。このためFRBは、今年あと2回、利上げを行う可能性が高い。5.5%~5.75%へと引き上げられることが見込まれている。経済の先行きは決して明るくないのだ。

「手取りが増えた」も不正確

またバイデン氏は、政権発足後、労働者の下位半数の賃金が、3.4%上昇したと述べている。

だがヘリテージ財団のE. J. アントニ氏によると、下位25%の階層の手取りは2.3%減り、25%から50%の階層の手取りは3.9%も下がったという(下図)。

(米Fox newsより)

全労働者の平均賃金は、26カ月連続で減り続けている。政権発足後たった2年でアメリカの一般的な家庭は7000ドル(約99万円)以上の購買力を失っている。住宅の購入さえままならなくなった。

「インフレ税」で国民から富を奪い、公約を破った

また同政権が悪化させたインフレは、「インフレ税」を発生させる。

インフレ税とは、物価が上昇しお金の価値が下がることで、政府の借金の返済負担が実質的に軽くなることを意味する。巨額の債務をかかえる政府にとっては大きなメリットだ。

しかしこれは、資産の保有者である国民から富を奪い、実質的に民間から政府に「所得移転」させることになる。このため、インフレ時の政府債務の借金の"棒引き"が、課税になぞらえて「インフレ税」と呼ばれている。

この「インフレ税」で、ひそかに国民から政府に富を移転させているのがバイデン政権だ。アントニ氏は、「バイデン政権の下で、アメリカ人から1ドルの価値の15%を静かに奪ってきた。この家庭から政府への大規模な富の移転は、国民の同意なしに行われた」と述べている。さらに「インフレの負担は低所得者に重くのしかかるため、40万ドル以下の所得者はバイデン氏にインフレ税を課されていることになる」と述べている。

つまり「40万ドル以下の所得者には増税しない」という公約を破っているのだ。

経済政策に関して、支持率が下がるのは、もっともな理由があるのだ。

経済参謀のバーンスタイン氏はエコノミストとしての訓練を受けていない

しかも米上院は13日、大統領経済諮問委員会(CEA)のジャレッド・バーンスタイン委員を委員長に昇格する人事を賛成50、反対49で承認した。CEA委員長は閣僚級でバイデン大統領の経済政策運営を支えることになる。

しかし、これまで彼は「成果」と言える成果を上げていない。

彼はオバマ政権下で「アメリカ復興・再投資法」を策定。これは「すぐに取り掛かれるプロジェクト」と呼ばれ、約1兆ドルの政府支出で、350万人の仕事を生み出すと主張した。

ところが結果的に、350万人の雇用など創出されなかったばかりか、110万人も失業者を増やした。しかも、実際の失業率は、政権の景気刺激策がなかった場合に考えられていた8.8%よりも、高い水準に上昇した。

またバーンスタイン氏は、先述した「インフレ抑制法」の原案となった「3.5兆ドル(約470兆円)規模の「ビルド・バック・ベター(より良き再建)法案」の提唱者でもある。

「インフレ抑制法」は、インフレを抑制させるどころか、むしろインフレを高進させ、政府債務を増大させている。ラッファー博士の言う「景気破綻策」である。

そもそもバーンスタイン氏は、社会福祉についての博士号を持っているだけで、民間企業で経営の経験もなければ、エコノミストとしてトレーニングを受けたこともない。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙が経済学者に行った調査では、12カ月以内に景気後退に入ると考える経済学者は61%にも上る。バイデン政権がこの難局をどう乗り切るのか、不安と疑問が募る。

【関連書籍】

『減量の経済学』

大川隆法著 幸福の科学出版

幸福の科学出版にて購入

Amazonにて購入

『「大きな政府」は国を滅ぼす』

アーサー・B.ラッファー 著/ザ・リバティ編集部 訳

幸福の科学出版

幸福の科学出版にて購入

Amazonにて購入

【関連記事】

2023年5月28日付本欄 債務上限問題で現われた米国民の本音 トランプ減税の効果で歳入は1.5兆ドル増えた

https://the-liberty.com/article/20654/

2023年5月21日付本欄 攻防が続く債務上限問題 合意できなければ世界的な金融危機か?

https://the-liberty.com/article/20626/

2023年4月30日付本欄 トランプ支持者を「MAGA過激派」と罵ってバイデン氏は出馬表明 激戦区の有権者は共和党の政府支出の削減を支持

https://the-liberty.com/article/20593/

2023年1月29日付本欄 債務上限をめぐる問題は歴史的な対決になる 2年間で約4兆ドルを使いこんだバイデン政権は素面(しらふ)になるのか

https://the-liberty.com/article/20299/

2023年2月号 大恐慌の足音が聞こえる

https://the-liberty.com/article/20163/

2023年1月号 米中間選挙の真相とアメリカ復権への道

https://the-liberty.com/article/20069/

2022年10月号 「ポスト・バイデン」を考える 中間選挙間近のアメリカ

https://the-liberty.com/article/19815/

2022年9月13日付本欄 囁かれ始めたアメリカの日本化!「ザ・ファクト」が「ザ・リバティ」の特集を読み解く番組を制作【ザ・ファクト×The Liberty】

https://the-liberty.com/article/19871/

2022年8月号 バイデン大統領は大恐慌を招くのか

https://the-liberty.com/article/19645/

2022年7月28日付本欄 バイデン大統領は「大恐慌」を招くのか? 「ザ・リバティ」の特集を読み解く番組を「ザ・ファクト」が制作【ザ・ファクト×The Liberty】

https://the-liberty.com/article/19750/


タグ: 国債  支持率  インフレ税  バーンスタイン  バイデン大統領  賃金  景気  インフレ 

「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内

YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画



記事ランキング

ランキング一覧はこちら