自然エネルギー社会は未来より過去の姿
2011.05.23
22日付朝日新聞の社説は「北欧が示す未来図 自然エネルギー社会へ」と題し、日本もスウェーデンやデンマークのように風力・太陽光発電を推し進め、「エネルギーの大量消費時代の終焉」に備えて「自然エネルギー社会へと離陸」すべきだと美しげに論じている。弊誌は風力や太陽光の開発を進めること自体に異論はないが、「北欧を見習って日本もやるべきだ」という単純な引き当てには違和感がある。
なぜなら、まずヨーロッパと日本では「風」が違う。ある原子力専門家は弊誌の取材にこう話した。「風力発電が盛んなオランダやデンマークは偏西風があり、同じ方向から同じ強さで、いい風が吹いている。それに比べて日本の風は向きも風力も一定せず、風力発電を設置できるロケーションが限られている」
さらに設置面積の問題がある。スウェーデンの人口密度は日本のわずか15分の1で、風力発電を設置する土地がふんだんにある。日本では、原子力発電1基(100万キロワット)にあたる電力を風力でまかなおうとすれば山手線の内側の3.5倍にあたる広大な土地が必要と計算されている。風力発電に適した風が吹いていて、かつそれほど広い土地が確保できる場所は非常に限られているのだ。
そして、筆者は昨年取材でスウェーデンを訪れたが、その印象を一言で言えば「つつましい過去の姿」だった。人々の消費生活や娯楽のあり方は全体として日本の1970年前後のイメージがあり、話を聞いたスウェーデン人は異口同音に「日本の経済繁栄は素晴らしい。ぜひ一度行ってみたい」と日本への憧れを口にした。
北欧諸国は、日本に比べて人口も経済規模も非常に小さい。その北欧型の産業政策やライフスタイルを日本が目指すことは、基本的に「つつましい昔に戻ること」を意味する。決して望ましい「未来図」とは思えない。(司)
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