民進党幹部が語る、蔡英文の勝利と台湾の未来
2020.01.22
1月11日に投開票された台湾総統選は、蔡英文総統が過去最多の817万票の得票により再選された。同時に行われた立法議員選挙でも、与党・民進党は、過半数となる61議席を確保した。民進党幹部として中台政策の立案に関わる林琮盛氏に、今回の選挙をめぐる情勢について聞いた。
(取材・編集 幸福の科学 国際政治局長 藤井幹久)
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民主進歩党 中国事務部主任
林琮盛
プロフィール
(りん・そうせい)(Johnny Lin)1978年、台南市生まれ。国立政治大学大学院を卒業。「聯合報」や「旺報」の駐中国特派員記者を務めた後、民進党の報道官などを歴任し、現職。
──今回の選挙戦で、民進党は勝利しました。
台湾人の多くが、主権、自由、民主主義を守るという、民進党の政策綱領を支持しました。もし、台湾の主権がなくなれば、経済も立ち行かなくなります。台湾人が自由と民主主義の価値を尊重したことは、台湾にとって重要なことでした。
蔡英文の再選までの道のり
──わずか約1年前の2018年11月の統一地方選では、民進党は敗北しました。
今回の選挙までに、五つの転換点がありました。第一は、19年1月2日に、習近平国家主席による「一国二制度による台湾統一」の発言に対して、蔡英文総統が直ちに拒絶の意思を表明したことです。蔡総統の強いリーダーシップは、多くの台湾人の期待に応えるものでした。
第二は、19年1月から3月に行われた立法議員の補欠選挙です。民進党は6議席のうち3議席を獲得しました。このあたりから党勢が戻ってきました。
第三は、昨年3月に、総統予備選に頼清徳(前行政院長)も立候補したことで、支持者に刺激が生まれました。蔡総統が予備選に勝利することになりましたが。
第四は、昨年6月以降、香港でデモが発生したことです。このときも、蔡総統は迅速に対応しました。こうした行動は、台湾の有権者の心をつかむことになりました。
第五は、昨年11月、香港での区議会議員選挙で、民主派が大勝したことです。台湾の選挙にも、追い風になりました。こうして民進党が勝利することになりました。
また、今回の選挙では、「私たちには、政治を変える力がある」と信じた若者たちが意思表示をしました。このことは、あまり他国にはみられない状況だと思います。
中国との「平和協定」を拒否する
──民進党と国民党では、中国に対するスタンスが大きく異なります。
国民党は、中国との「平和協定」の実現に意欲を見せていました。しかし、私たちには絶対に受け入れられません。なぜなら、「一つの中国」の原則に基づくものだからです。もし、中国と「平和協定」を結んでしまったら、台湾は追い詰められ、中国の圧力に抗することができなくなるからです。
国民党は、こうした協定が中台間の永続的な平和をもたらすとしていましたが、それは完全な誤りでした。中国共産党は、平和な関係だけに満足するはずがないからです。そうなれば、中国は、いずれ台湾を併合しようするはずです。
中国共産党は、台湾にある多くの会社を通じて、インターネット情報の操作を行ってきました。18年の地方選挙では、そうしたことによる影響がありました。罰則を設けることで、その意思を挫くことが必要です。昨年12月に「反浸透法」が可決されたので(蔡英文政権は、1月15日に施行を発表)、今後、その効果が期待されます。
※「反浸透法」……国外敵対勢力からの指示や資金援助による選挙に関する活動に対して、5年以下の懲役を科すなどを内容とする。
──選挙中は、海外から中国民主活動家の視察団も訪台していました。
中国政府からは「政治犯」とされる人たちですが、中国を民主化して自由な国にすることを願う人たちです。中国共産党は権力を手放さないので、それは長い道のりになるのかもしれません。習近平氏は権力を強化してきているので、楽観的な見通しは持てません。
緊密化する米台関係
──トランプ政権は、台湾を守る意思を明確にしています。
米台関係は、かつてないほど緊密です。昨年、アメリカは台湾に対して、最新鋭の武器売却を許可しました。台湾にミサイル、F16戦闘機、戦車を売却しています。もし、アメリカが台湾を見捨てるつもりならば、こうした動きをするはずがありません。アメリカは台湾を防衛するでしょうし、台湾も、みずからの意思と能力により自衛することができます。
日台の関係強化を期待
──今春に、安倍首相は、習近平国家主席を国賓待遇で招こうとしています。
安倍首相には、日中関係が悪化することへの恐れがあるのかもしれません。しかし、地政学的にみれば、台湾は、日本、韓国、アメリカにとって非常に重要です。日米にとって、台湾を失うことはできないはずです。
──幸福実現党は、日台の国交回復を提唱しています。
現在、日台関係は非常に緊密になっています。容易なことではありませんが、台湾人の多くは日本との外交関係を望んでいます。私たちは、その困難さが高いことも知っています。
しかし、日台間の実質的な協力も期待したいです。例えば、米国政府の現職高官が台湾を訪問しています。最近の(軍用ヘリ墜落事件の)葬儀には、米国防総省の空軍准将も参列していました。このようなことは、日本政府ではあまり見られません。日本は、もっとやればいいと思います。どんどん関係を深めていけると思います。
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「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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