2019年11月号記事

国際政治局

Interview

「今日の香港は明日の台湾」

台湾で高まる「香港革命」への連帯

香港で逮捕された民主活動家・黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏が、保釈直後に台湾で語ったこととは。

台湾の与党・民進党の若きカリスマに聞いた。

(取材・編集 国際政治局 小林真由美)

9月3日に台湾を訪れ、民進党と記者会見を行う黄氏。写真:AP/アフロ。

香港で大規模なデモが始まってから約4カ月、その勢いは激しさを増している(9月18日時点)。

香港の民主化要求デモ「雨傘運動」の学生リーダー・黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は8月末、違法な抗議集会を計画した疑いで逮捕され、同日中に保釈された。

黄氏は保釈後すぐに台湾を訪れ、与党・民進党の幹部などと会談。記者会見では、「北京の圧力に直面する香港と台湾は、運命共同体」「今日の香港は明日の台湾」とした上で、「香港が近い将来、自由や民主主義の価値観を大切にする台湾のようになることを望む」という趣旨の発言をした。

また、中国の建国70周年の記念イベントに向けて、台湾でも香港への支持を示す大規模なデモを開催してほしいと呼びかけた。

台湾が香港を注視する理由

台湾では、主要メディアが香港の様子を大きく報じ、香港デモに賛同する動きも活発化している。

台湾にとって、香港の現状は他人事ではない。現在、香港に適用されている「一国二制度」はもともと、約40年前に中国の指導者・鄧(トウ)小平が、台湾を統一するために設計した制度だった。

中国の習近平国家主席は今年1月、「一国二制度」により中台の平和統一を推進するという談話を発表したが、これは中国の"悲願"だ。台湾の人々は、香港の様子を自分たちのことのように注視している。

台湾では2020年1月に総統選挙が行われる。中国に対して強硬なスタンスの民進党は、香港デモを支持する姿勢を表明したが、国民党は中国寄りのスタンスを維持。中国政府は、台湾で親中派政権を誕生させるために、メディア操作や買収など、あらゆる介入・工作を行っている。

台湾を訪れた香港の黄氏と会談した民進党の林飛帆副秘書長に、香港デモと来年の総統選挙について話を聞いた。

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台湾 民進党 副秘書長

林飛帆

プロフィール

(りん・ひはん)1988年、台南市生まれ。成功大学、台湾大学大学院を卒業後、2014年に馬英九政権が中国とのサービス貿易協定を強行採決しようとしたことに抗議した「ひまわり学生運動」のリーダーとして活躍。現在は英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの修士課程に在学中。2019年7月から現職。

──香港の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏との会談はどうでしたか。

林飛帆氏(以下、林): 黄氏とは、台湾のひまわり学生運動や香港の雨傘運動が起きてから、頻繁に情報交換をしてきました。今回は、香港デモの今後の方向性についてたくさん議論しました。

彼らは、台湾だけでなく、ニューヨークやロンドン、東京など、世界各地で同時に香港を支持するデモを起こしてほしいと願っています。これは、私たちの願いでもあります。

台湾では、民間のNGOや政治団体が協力して大規模なデモを行う計画があります。

台湾の蔡英文政権は、香港市民の自由や民主主義、人権を追求する姿勢を支持しており、保護を求める香港市民を支援する法整備などを進めています。

香港の「一国二制度」が機能していないのは明らかであり、中国から圧力を受けている台湾にとっても他人事ではありません。

9月3日、台北市の民進党本部で、林副秘書長(写真最右)らと会談した黄氏(中央)ら(写真は、黄氏のFacebookより)。

日台の連携で自由を守る

──日本政府、もしくは日本人に期待することは何ですか。

林: 日本への期待はたくさんあります。大事なことは、日本と台湾は、ともに中国という強大な覇権主義国家と立ち向かっているということです。

中国の覇権拡大に向けた野心は、「一帯一路」構想や南シナ海の領土拡大などを見れば明らかです。

日本と台湾は、自由や民主主義、人権などの基本的な価値観を共有しています。日台が力を合わせて、香港を支援し、中国の覇権拡大を抑止する力になることが大事です。

東京でも、香港を支援するデモ活動などを展開してくれることを期待しています。香港・台湾問題は、日本にとっても対岸の火事ではないはずです。

──あなたは、選挙直前の重要な時期に副秘書長という党の要職に就きました。その背景は?

林: 私に特に期待されていることは、来年の選挙で若者の支持を獲得することだと思います。選挙で必ず勝ち、台湾の自由と民主主義を守る必要があると考えています。日本との関係もさらに強化し、アジアの平和と繁栄を守るために貢献したいです。