モスクワを訪問中のギリシャのチプラス首相が、ロシアのプーチン大統領と初会談。農業やインフラ、資源・エネルギーの分野での協力を強化することなどで一致した。

ギリシャは、ロシアがトルコ向けに計画している天然ガス・パイプラインの建造を、ギリシャまで延ばす検討に入ることを公表。これが実現すれば、ロシアは南・東欧諸国への天然ガスの輸送拠点となる。そのロシアは、欧州からの農作物などに禁輸措置を発動しているが、ギリシャ産農作物の輸入規制を緩和する方向。また、インフラ整備に融資することで、ギリシャ経済を支える考えを示した。

債務問題でEUと対立するギリシャは、ロシアカードを手に入れることでEUを揺さぶり、なるべく有利な金融支援を得ようとしている。2月、EUはギリシャへの金融支援の延長に合意したが、ギリシャの提示した改革案を容認しておらず、昨夏以降、残りの融資は実行されていない。ギリシャは9日期限の国際通貨基金(IMF)への融資の一部返済を確約しているものの、その後も債務の返済が続く。

今回、ギリシャに協力したロシアだが、EUに加盟するギリシャなどの中小国との協力を強めることでEUの切り崩しを図り、欧米からの制裁の影響を緩和する狙いがある。背景には、昨年3月にクリミア併合を宣言したことを端緒に、エネルギーや金融、軍事の分野で、米国やEUから制裁を受けてきたことがある。これらの制裁の他、石油価格の下落、ルーブル安によって、ロシア経済は苦境に陥っているのだ。

ギリシャをはじめ、中国や北朝鮮など、欧米諸国が牽制・警戒すればするほど、そうした反欧米諸国がロシアに近づく構図ができつつある。もちろん、ロシアが近づいているという見方もできる。だが、欧米がロシアを孤立させようとすればするほど、反欧米諸国が連携を強める状態は決して好ましくない。その最大の脅威は、やはり、軍事大国の中国だからだ。

世界の覇権を握ろうとしている中国は、現在世界のリーダー国家・アメリカに対抗するために、さまざまな機会をとらえて「仲間」を増やそうとしている。アメリカと日本は参加を見送ったが、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、50以上の国が参加を表明したことは、その象徴だ。

もちろん、中国の触手はギリシャにも伸びている。今年2月、中国海軍の軍艦が、ギリシャのピレリウス港に寄港した際、チプラス首相は甲板上に姿を見せ、中国による同港への投資事業や、中国が目指す「陸と海のシルクロード」づくりに積極的に参加する意向を示した。欧州の首脳が、中国海軍の艦艇に載り、挨拶するのは異例なことだ。それだけ、ギリシャにとって中国は、大事な存在ということである。

さらに言えば、中国にとってギリシャは、陸と海のシルクロードの終着点であるヨーロッパの要衝だ。

さまざまな形で覇権拡大を狙う中国。AIIBの設立も含め、日本は欧州各国の動きの背景に、中国の影を見抜かなければならない危険な時代に入っていることを自覚すべきだろう。(泉/格)

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