アメリカの主要紙がこのほど、元米軍の中国専門家で、現在ハドソン・インスティチュートというシンクタンクに所属するマイケル・ピルズベリー氏が執筆した『The Hundred Year Marathon』(100年マラソン)という書籍を紹介している。

同書では、中国が毛沢東政権の下で、1955年に始めた覇権国家を目指すための「100年の計」によって、過去40年間、アメリカの政権が延々とだまされ続けてきことを指摘。逆にその間、中国は、発展途上国であることを強調して、アメリカを刺激せずに経済的・技術的支援を引き出すことに専念してきたという。

その目的は、いずれ経済的にも軍事的にもアメリカを超え、戦後アメリカが築き上げてきた国際システムを、中国共産党が支配する政治・経済システムに、そのまま入れ替えることにある。

こうした見方は、すでに2012年末に発刊されている『実践・私の中国分析』(平松茂雄著、幸福の科学出版刊)でも指摘されており、中国の国家戦略に関する分析も重なる。

今回、ピルズベリー氏が発刊した同書では、アメリカ政府内では機密とされてきた大統領指令や、中国側のタカ派の言論などが調査対象になっている。過去40年もの間、アメリカが中国を支援してきた理由として、「途上国である中国を支援することで、覇権主義を目指さず、民主的で平和な中国が台頭するだろう」という考えがあったことを指摘。実際、同氏も、以前は親中派の一人であったという。

同氏がこうした中国の見方について、「希望的観測に過ぎない」と理解したのは、1989年の天安門事件の後だった。事件後、アメリカに制裁を受けたにもかかわらず、アメリカ国内における中国ロビーの影響力で、米中は数年後に自由貿易協定の締結にまでこぎ着けている。そこには、アメリカ側の見解の甘さと、中国側の老獪さがあると指摘する。

また、中国のタカ派が提唱する覇権が実現した世界は、「自由より規律を、法律より倫理を、そして民主主義や人権よりもエリートによる政治」を重視するという。これは、まさにタカ派の急先鋒とも言うべき習近平・中国国家主席がやろうとしていることだ。毛沢東主義を信奉している習氏は、中国が60年前に始めた事業を推し進め、ここ数年で、その集大成を内外に見せつけようと動いているようにも見える。

確かに、ここ数十年の間、アメリカは中国への支援を続け、その台頭に貢献してきた。しかし、それは長年ODAを送り続けてきた日本にも言えることだ。日米は、中国が平和に発展してくれることを願って支援を続けてきた。しかし、現在東アジアが中国によって脅かされている状況の根底には、中国の真意を見抜けなかった洞察力の不足がある。

もし日本やアメリカが、戦後70年の間、つちかってきた繁栄を守ろうと思うのであれば、急速に軍事大国化する中国に対抗する準備を、早急に進める必要がある。(中)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『実践・私の中国分析』 平松茂雄著

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