ここ数年、米軍は「エア・シー・バトル」構想というものを打ち出している。これは、空軍、海軍、陸軍、宇宙軍、サイバー軍などの相互連携を深め、「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)能力を高めている「仮想敵」に対抗するためのものだ。

米軍は、この構想は特定の国に向けられたものではないとしているが、明らかに中国を意識していることが伺える。

中国のA2/AD能力は、対艦ミサイル、衛星破壊、潜水艦などで、有事の際に米軍を中国本土やその他の戦域に近づけないことを、その目的としている。「エア・シー・バトル」はA2/ADに対抗するために、例えばサイバー攻撃で相手の制御システムを無力化し、その間に空軍・海軍による領域侵入を行うなど、多方面にわたる連携を前提とするものだ。

しかし、米ナショナル・インタレスト誌はこのほど、「エア・シー・バトル」構想がサイバー攻撃によって、無力化される恐れがあると指摘した。

もし、サイバー攻撃によって味方の通信・衛星・ネットワークが無力化されてしまった場合、実際に現場で動いている軍は「目」や「耳」を失い、窮地に立たされる。

また、たとえ軍は大丈夫でも、本国で民間のシステムが狙われることもあり得ると同誌は指摘する。最近、ソニーがサイバー攻撃に遭い、大量の個人情報や未公開映画などが流出した。もし発電所、交通機関、情報機関などが麻痺した場合、その損害は計り知れない。

同誌は、サイバー・ディフェンスに力を入れるべきだとしているが、現段階で、ネットワークや制御系を完璧に防衛することは不可能であることも認めている。

現代は、システムの上にシステムを積み重ねた高度な社会であり、それだけに「弱点」と呼べる箇所も多い。携帯はネットワークなくしては作動せず、ネットワークは発電・送電システムが落ちれば成り立たず、発電・送電システムは制御系システムによってコントロールされている。どれか一つ落ちただけで、通信は成り立たなくなるのだ。

日本がサイバー攻撃を受けて通信・衛星などが無力化された場合、連絡や監視がままならず、気付いたときには既に侵略されていたなどということもあり得る。

高度に進化した社会である日本も、サイバー空間の防衛に力を入れるべきである。(中)

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