ソニーの米映画子会社であるソニー・ピクチャーズエンタテインメントがサイバー攻撃を受け、映画の公開を中止した問題で、米連邦捜査局(FBI)は19日、プログラムの特性やIPアドレスなどから北朝鮮の犯行と断定した。

オバマ大統領は同日、北朝鮮に対して「相応の対応をとる」とし、ソニーが映画の公開中止を決めたことについて「間違いを犯した」「アメリカを独裁者が出しゃばり検閲する社会にはできない」と述べた。北朝鮮は関与を否定している。

ソニーは、「ガーディアンズ・オブ・ピース」というグループにハッキング攻撃を受け、企業の内部事情や未公開の映画など、100TB以上(CD14万枚分以上)のデータが11月末に流出。ソニー従業員だけでなく、トム・ハンクスやナタリー・ポートマンなど、有名俳優の電話番号、メールアドレス、俸給、ネット上の偽名、社会保障番号などが流出している。コンピューター・セキュリティー会社・マンディアントによれば、流出したデータの量は前代未聞だという。

問題となった映画は、金正恩暗殺をテーマにしたコメディー映画「ザ・インタビュー」で、12月25日に公開を控えていた。これについて、7月に北朝鮮高官が、アメリカ政府に映画の上映を中止するよう要求していたため、当初から北朝鮮がこの映画の上映を止めさせるためにハッキングを行ったという憶測が飛び交っていた。

また、ハッキングの数日後に、同じハッキング・グループが、同映画の上映を取りやめなければ、さらなる行動に出ると、ネット上に脅しめいた投稿をしている。同グループは流出した多くの映画の中で、なぜか「ザ・インタビュー」にこだわっていたため、北朝鮮とのつながりが濃厚とされていた。

情報セキュリティーの面から見れば、今回は一企業や個人情報の流出“程度"で済んだが、大企業がいとも簡単に被害を受けたところを見ると、現代社会の脆弱性を考えさせられる。現代では、電気一つを消すだけで、電車も、金融システムも、コンピューターも、産業の制御システムも動かなくなる。

一方、サイバー攻撃による脅しで、表現の自由が脅かされ、映画公開中止という損害が出た。さらに、具体的な内容に踏み込んでいないものの、オバマ大統領が報復措置をとる意向を示している。サイバー攻撃の“威力"が、ミサイルなどによる武力攻撃に近づいていると言えるだろう。

サイバー空間は、陸・海・空・宇宙に次ぐ「第五の戦場」とされている。実際、最近の米軍の調査報告書によれば、有事の際、中国はアメリカの送電システムの一部を落としたり、制御システムを乗っ取ることができるとした。

日本の国防体制の強化には、法体系の整備や、新兵器の開発や調達だけでなく、目に見えないサイバー空間における攻撃への備えも必要だ。(中)

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