アメリカのウォール街やイギリス・ロンドンの金融センターで働いている富裕層が、ニュージーランドなどで秘密裏に土地を買い、家や飛行場を建設していることを、英紙デイリー・ミラーがこのほど報じた。

別荘でも建てているのかと思うかもしれないが、これらは、万が一、貧困層が蜂起し、富裕層を襲撃しようとした場合の逃げ場として買っているという。

人種問題が元で、2011年にロンドンで見られた暴動や、14年に米ファーガソン市で起こった騒乱を見た富裕層は、いずれ格差社会に怒った民衆が暴徒と化すのではないかと懸念しているのだ。

確かに最近、経済格差は拡大しており、これを何とかして是正すべきとの論調が数多く見られる。だが、問題は必ずしも格差ではなく、貧困層の人々が、「どう頑張っても自分たちの生活は良くならない」と感じていることではないだろうか。そのはけ口として、富裕層に対する妬みを抱いているのだ。

1月22日~25日に行われた世界経済フォーラムに参加したInstitute for New Economic Thinking (新経済考察機構) 会長のロバート・ジョンソン氏は、「人々は、自分の子供達に、成功するチャンスがあると実感できなければならない」(26日付英デイリー・ミラー紙)とし、多くの人々が、未来に対して希望を持てないことが問題であると指摘している。

格差に怒った貧困層が暴動を起こし、富裕層を襲って富を奪うというのは、マルクスが予言した資本主義の終焉そのものだ。しかし、富裕層を妬んで引きずりおろしても、富を生み出す者がいなければ、実現するのは「貧しさの平等」だけである。

資本主義社会において、ある程度の格差は許容するしかない。「機会の平等」のもとで競争すれば、結果に差が出るのは必然のことだ。

貧困者は、他人を妬み、富裕層を引きずり下しても、自分たちの状況が改善されるわけではないことを理解しなくてはならない。やはり、自助努力で自らの状況を変えていくのが人生の王道と言えるのではないだろうか。

また、富裕層も、ここ数年、金融業界で流行っているマネーゲームではなく、実体経済で富を生むことに専念すべきではないだろうか。それこそが、資本主義社会における金持ちの義務とも言える。

最近、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の格差論がもてはやされるなど、マルクス主義・社会主義の亡霊が再び台頭しているように見える。金持ちも貧者も、もう一段知恵をしぼり、新たな富を生み出すことによって、全ての国民の生活が潤う社会を目指すべきだ。本当に「貧しさの平等」がやってきてからでは遅い。(中)

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