年末になると、今年一年の出来事を振り返る報道が増えるが、本欄も独自の視点から今年の国内政治を振り返ってみたい。

安全保障政策はやや前進?

最初に2014年の安全保障関連の政策を概観してみよう。今年、最も大きな出来事は、何と言っても7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定だろう。「権利はあるが行使できない」という戦後の歴代内閣の曖昧な態度を打ち破り、限定的ではあるが「行使できる」という判断を行ったのは大きい。前例にとらわれない「創造的な」判断であり、中韓以外のアジア諸国や同盟国であるアメリカにも歓迎された。

この決定と出来事と前後して、歴史認識問題においてもやや「打ち返し」が進んだ。2月には、河野談話作成時の官房副長官だった石原信雄氏が、談話の作成過程において韓国側とすり合わせていたことを証言。6月には政府の調査チームが、河野談話は元慰安婦の証言だけを根拠に「強制性」を打ち出したもので、日韓の合作であったとする報告を発表した。

こうした背景もあり、今まで「従軍慰安婦問題」報道の急先鋒だった朝日新聞が、8月にこれまでの報道姿勢について一部誤りを認めた。日本軍による強制連行がなかったことについては明確に訂正・謝罪していないことなど問題は残るが、朝日新聞が「反省特集」を組み、謝罪したことは、日本人の自虐史観を改める上で少なからぬ影響があるだろう。

日本の防衛力強化を推し進める上で、日本が正義の国か悪魔の国かという点を明らかにすることは、極めて重要だ。この点、「河野談話」の虚偽性が明らかになってきたことは大きな変化である。

とはいえ、集団的自衛権の行使容認を具体化する法整備はなかなか進まず、9月中旬以降に小笠原諸島に中国船が大挙して押し寄せてきてサンゴ礁の密漁を行っても、有効な手段を取れない状況にある。北朝鮮拉致問題も進展せず、中国も「南京事件」の追悼式典を国家行事として行うなど、歴史問題による“攻撃"を緩める様子はない。

消費増税で景気失速 アベノミクスの限界が露呈

経済政策の面では、今年4月に行われた8%への消費増税が、上向きかけていた景気にマイナスのインパクトを与えた。

実際、4~6月期のGDPは年率換算で前期比「マイナス7.3%」となり、夏を過ぎても消費は回復しなかった。

2015年の秋に10%に上げるという最悪の事態は回避したものの、アベノミクスはすでに「迷走」している。

安倍晋三首相は、「デフレ脱却」を掲げて企業に賃上げを要求したり、「ウィメノミクス」と称して女性管理職の割合を増やすよう働きかけたりしているが、企業にとっては規制強化となり、景気回復には却って逆効果だ。

結局、安倍首相の頭の中には「政府が経済の動向を左右できる」という発想があるのだろう。だが、アベノミクス第三の矢である「成長戦略」は、もともと民間の力を引き出すことを目指していたのではなかったか。

そのためには、規制緩和や利権政治の撤廃による「自由」の範囲の拡大が必要となるが、幸福の科学大学不認可問題に象徴されるように、現状は規制拡大の方向に進んでいる。

衆院選の勝利を生かせるか?

12月には、消費増税の延期とアベノミクスの是非を問うという名目で、解散・総選挙が行われた。その結果、自公が圧勝し、安倍首相は長期政権への足場を築いた。野党がふがいないための勝利とも言われるが、安全保障政策や成長戦略など、長期的な政策課題に取り組める環境が整ったこと自体は望ましい。

あとは、このチャンスを生かせるか否かだ。中国の動向や今の経済状況を見れば、憲法改正や規制撤廃への施策を早々に打つべきだろう。来年早々に行われる統一地方選や、2016年の参院選などを見越して“安全運転"をしている余裕はない。

日本の政治が正しい方向に進むよう、来年も本誌は有効な提言をしていく。(佳)

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