2014年10月号記事

「黒字ブラック企業を目指せ!」

ビル・ゲイツもジョブズも人の何倍も働いていた

牛丼チェーン「すき家」の長時間労働の実態に批判が集まるなど、「ブラック企業」を糾弾する風潮が強まっている。しかし、厳しい競争を生き抜こうと奮闘する企業努力を一律に「ブラック」呼ばわりしていると、資本主義の精神や企業家精神を傷つけてしまうだろう。日本経済と雇用を支える企業は、今日も新しい付加価値を生んで黒字を目指せばいいのだ。

(編集部 近藤雅之)

「ブラック企業」呼ばわりされる主な基準

1 給料以上に働かされる

  • 長時間労働で低賃金
  • サービス残業・徹夜が常態化
  • 残業手当が払われない

2 過酷な労働環境

  • 過剰なノルマを課される
  • 業績が悪いと厳しく叱責される(パワハラ)
  • 休みが取れない
  • ベンチャー企業、新興成長企業で変化が激しい

3 人を使い捨てにする

  • 福利厚生が不十分
  • 成果を出さないとすぐ解雇
  • 離職率が高い

「ブラック企業」って何だ

「ブラック企業」は、もともと詐欺などの違法行為を生業にする企業を指す言葉だった。しかし、長引くデフレ不況でコスト削減が進み、従業員に長時間労働や過剰なノルマを課す企業が増えたことで、 労働条件の厳しい企業を広くブラック企業と呼ぶようになった。

2008年には、『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』(黒井勇人著)が発刊され、翌09年に映画化。さらに12年から毎年、弁護士や大学教授、ジャーナリストなどの企画による「ブラック企業大賞」が開催されるようになった。長時間労働やパワハラ、低賃金などの指標からノミネートし、ネット投票などで大賞を決めている。

また同年、若者の労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」の代表である今野晴貴氏が、『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』を出版。こうした流れの中、 「ブラック企業」は13年の新語・流行語大賞に選ばれるなどして、世間に広く浸透することになった。

今では、ワタミやすき家などの外食産業をはじめ、IT企業やメーカー、証券、宅配、コンビニ、コンサルなど、さまざまな業種の企業がネット上でブラック呼ばわりされている。

こうした世論の動きを受け、13年の参院選では、民主党や共産党がブラック企業の取り締まりを政策に掲げ、安倍政権も今年5月、ブラック企業対策を強化する方針を打ち出した。

だが、 ブラック企業批判には、単なる従業員側のクレームとも言えるような内容も多く、企業側への理解を欠いている印象が否めない。 一方的に批判されて企業イメージを損ない、業績悪化につながるリスクは、経営者にとっては脅威だろう。

現状のブラック企業批判の問題点について、識者に聞いた。