ウクライナ問題をめぐり、アメリカは経済制裁でロシアを追い詰めようとしているが、そのことが中ロ接近につながりかねないとの懸念もぬぐえない。最近では、中ロの接近が宇宙分野にも及ぼうとしている。

宇宙部門を担当しているロシアのロゴジン副首相は13日、国際宇宙ステーション(ISS)について、アメリカが要請している2024年までの共同運用の延長を、拒否する意向を示した。

ISSは宇宙環境を利用した研究や実験を行うための巨大な有人施設で2011年に完成した。日米露をはじめ、15カ国が協力して運用している。ロシアはその中で、宇宙飛行士を運ぶ宇宙船「ソユース」を提供しており、ロシアの協力なしでは飛行士はISSとの往復ができない。2020年までの運用継続で各国は合意しているが、延長には全参加国の合意が必要であり、ロシアが延長を拒否すればプロジェクトそのものがとん挫してしまう恐れがある。

ウクライナ問題をめぐる対露制裁の一環として、アメリカは先月2日、米ロの宇宙協力関係の停止を決めたが、ISSについては除外していた。今回のロゴジン副首相の発言は、都合の良い制裁を加えるアメリカに対する、ロシア側の報復とみられる。

宇宙分野でロシアが次のパートナーとして候補にしているのが中国だ。20日に予定している中露首脳会談を前に、両国の担当者が宇宙分野の協力を協議するという情報もある。

中国は昨年12月に無人探査機の月面着陸を成功させており、2020年には宇宙ステーション「天宮」も完成させる。宇宙兵器の開発においては、2007年にミサイルを気象衛星に当てる破壊実験に成功しており、宇宙空間にあるアメリカの防衛システムを打ち落とす技術を持っているとされる。

中国の宇宙開発での台頭を阻止したいアメリカにとって、今回のロシアの方針は痛恨の極みだろう。しかし、ロシアに対して強硬な姿勢を続け、中国との接近へと追いやったのは、他ならぬアメリカ自身だ。中国の覇権主義をいかに食い止めるかが国際社会の大きな課題となっている中で、ロシアが中国との関係強化に動くのは、世界にとっての脅威と言える。アメリカは戦略的な考え方を忘れず、中ロの接近を防がなければならない。

(HS政経塾 壹岐愛子)

【関連記事】

2014年4月23日付本欄 日米で宇宙における防衛協力の強化へ 日本の高い技術力を生かせ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7714

2014年4月19日付本欄 中国・習近平「空と宇宙を統合した強大な空軍の構築」を指示 宇宙防衛に日本も取り組め

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7700